腰が痛いときに
── ぎっくり腰・坐骨神経痛・脊柱管狭窄症・内科疾患 ──
日本人にとても多い「腰痛」
「重いものを持った瞬間にギクッと痛くなった」「何となく慢性的に腰が重い」「お尻から足にかけてしびれる」——腰痛は、日本人が経験する症状の中でも非常に多いものです。厚生労働省の調査でも、腰痛は男女ともに自覚症状の上位に挙がり続けており、多くの方が一度は悩まされる身近な症状といえます。
多くは筋肉や関節由来のものですが、なかには神経の圧迫が原因のものや、腎臓・血管・消化器など内臓の病気が隠れているものもあります。この記事では、よくある「ぎっくり腰」「坐骨神経痛」「脊柱管狭窄症」と、注意が必要な内科疾患による腰痛について整理していきます。
ぎっくり腰(急性腰痛症)
重いものを持ち上げたとき、くしゃみをしたとき、前かがみになった瞬間などに、突然腰に強い痛みが走る状態がいわゆる「ぎっくり腰」です。正式には「急性腰痛症」と呼ばれます。
動こうとすると激しく痛み、体をまっすぐに保てないこともありますが、多くは数日〜2週間ほどで徐々に改善していくことが多いとされています。主な原因は筋肉や靭帯の急な損傷・捻挫であり、レントゲンやMRIで大きな異常が見つからないことも珍しくありません。
「安静にしていれば治る」と思われがちですが、現在の腰痛診療では長期間の安静は推奨されておらず、痛みの範囲内で少しずつ動くことが回復を助けるとされています。数日経っても改善しない場合や、足のしびれが出てきた場合は、早めに受診されることをおすすめします。
坐骨神経痛・脊柱管狭窄症
坐骨神経痛は、病名ではなく症状の名前です。腰からお尻・太もも・足先にかけて、電気が走るような痛みやしびれが広がる状態を指します。原因として多いのは、腰椎椎間板ヘルニア(腰の骨と骨の間にあるクッションが飛び出して神経を圧迫する状態)です。片側のお尻から足にかけて痛みやしびれが広がり、前かがみや座った姿勢で症状が強くなることがあります。
脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)は、加齢や姿勢の変化などにより、背骨の中を通る「神経の通り道(脊柱管)」が狭くなり、神経が圧迫される病気です。特徴的なのは「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」と呼ばれる症状で、歩くうちに腰や足が痛くなってしびれ・歩きづらくなるが、前かがみでしばらく休むと楽になってまた歩けるようになる、という経過をたどります。両側の足に症状が出ることもあります。
坐骨神経痛と脊柱管狭窄症は症状が似ていますが、「歩行で悪化し前かがみで楽になる」という経過や、両側性かどうかなどが鑑別のポイントになります。どちらも、診察・画像検査(レントゲン・MRIなど)を組み合わせて正確な原因を見極めることが大切です。
内科疾患が隠れている腰の痛み
腰の痛みの中には、整形外科的な問題だけでなく、内臓からの痛みが「腰痛」として感じられるものがあります。代表的なものとして、腎盂腎炎(じんうじんえん:腎臓の細菌感染)・尿路結石などの泌尿器系疾患、腹部大動脈瘤(おなかの大きな血管のふくらみ)などの血管の病気、膵臓や消化管の病気などがあります。
発熱・悪寒・排尿時痛などを伴う腰痛、じっとしていても楽にならないズキズキとした深い痛み、冷や汗やおなかに拍動を感じるような違和感を伴う痛み——こうした場合には、整形外科的な腰痛とは異なる原因を考える必要があります。「腰が痛いだけ」と思って受診されたところ、内科的な病気が見つかったというケースは実際にあります。腰痛に慣れている方ほど「またいつものやつ」と判断しがちですが、いつもと違う質の痛みを感じたときは、改めて受診されることをおすすめします。
こんな場合は早めに受診を
次のような症状がある場合は、「そのうち治るだろう」と様子を見続けず、早めにご相談ください。
- 足のしびれや筋力低下(つまずきやすい・足に力が入らない)
- 排尿・排便の異常(出にくい・失禁など)
- 発熱を伴う腰痛
- 安静にしていても楽にならない、夜間も続く強い痛み
- いつもとは違う質・場所・広がりの痛み
足の筋力低下や排尿・排便の障害は、脊柱管狭窄症が進行して神経が強く圧迫されているサインである可能性があります。また、発熱を伴う腰痛や安静時にも続く強い痛みは、内科的な疾患が関係していることがあります。
腰痛とのつきあい方:動かすことの大切さ
多くの腰痛は、適切な対処と少しずつ体を動かしていくことで改善していきます。「痛いからまったく動かない」でいると筋力が落ち、腰への負担がかえって増えて再発しやすくなるという悪循環が生じることもあります。
治療の基本は、痛みを抑える薬・外用薬・ブロック注射などで症状をコントロールしながら、姿勢や体幹筋力を整えるリハビリテーションを並行して行うことです。日常生活での物の持ち上げ方・姿勢・動作の工夫も、再発予防に大きく役立ちます。体重管理も腰への負担を左右する重要な要素であり、肥満・糖尿病・骨粗鬆症などの内科的な背景がある方では、そちらの管理と並行して取り組むことが大切です。
当院での腰痛診療について
当院では、腰痛でご来院された方に対して、まず問診と診察でいつから・どのような動作で痛みが出るか・しびれや筋力低下はないか・発熱や排尿の異常はないかなどを丁寧に確認します。必要に応じてレントゲン撮影を行い整形外科的な原因を評価するとともに、内科的な疾患が疑われる場合は血液検査・尿検査・腹部エコーなども活用して総合的に判断します。
整形外科・リハビリテーション科と内科の両面を診ることができる当院の特性を活かして、「腰だけを見る」のではなく、からだ全体の状態や生活背景も含めて原因を整理し、その方に合った治療・リハビリ・生活指導を一緒に考えていきます。
「いつもの腰痛かな」と思ったときも、お気軽に
腰痛は「慣れてしまっている症状」だからこそ、受診のタイミングを逃しやすいものです。「また腰が痛くなっただけ」「病院に行くほどでもない」と思いながら、実は神経の問題や内臓の病気が隠れていたというケースもあります。
「腰痛が続いていてつらい」「足のしびれも出てきた」「いつもと何か違う気がする」——そんなときは、どうぞお気軽にご相談ください。当院では、「腰だけを診る」のではなく、その方の生活全体を視野に入れながら、長く元気に動ける体づくりのサポートができればと考えています。
友成第二医院(文京区護国寺)/内科・整形外科・リハビリテーション科