骨粗鬆症(こつそしょうしょう)
── 転倒予防・骨折予防のために知っておきたいこと ──
「骨密度が低い」と言われたら
健康診断や整形外科受診で「骨密度が低めです」「骨粗鬆症の疑いがあります」と言われる方は年々増えています。自覚症状がほとんどないため、「痛くないのに治療が必要なのか」「薬は怖い」といった理由で、そのままになってしまうケースも少なくありません。
骨粗鬆症は、骨がスカスカになり、わずかな転倒や尻もちでも骨折しやすくなる病気です。この記事では、「なぜ骨粗鬆症が問題なのか」「転倒と骨折を防ぐために何ができるか」についてわかりやすく整理します。
骨粗鬆症とはどんな病気か
骨は常に「壊す」と「作る」を繰り返しながら、質と量のバランスを保っています。加齢・女性ホルモンの低下・栄養不足・運動不足などが重なると、「壊す」力が「作る」力を上回り、骨量が少しずつ減っていきます。骨密度検査(主にDXA法:X線を使って骨の密度を測る検査)で一定の基準より低く、骨折リスクが高い状態と判断された場合に「骨粗鬆症」と診断されます。
骨粗鬆症は特に閉経後の女性に多い病気ですが、男性でも加齢やステロイド薬の長期使用などをきっかけに起こることがあります。また、糖尿病・慢性腎臓病・甲状腺の病気なども骨密度低下と関連することが知られており、生活習慣病との管理が重なる場面も多くあります。
なぜ「転倒予防」がそれほど重要なのか
骨粗鬆症が怖いのは、「骨折の起こりやすさ」と「骨折後の生活への影響」にあります。背骨の圧迫骨折、太ももの付け根(大腿骨近位部)の骨折、手首・肩などの骨折は、わずかな転倒・尻もち・段差でつまずいた程度でも起こり得ます。
中でも太ももの付け根の骨折は、手術や長期間のリハビリが必要になることが多く、その後の寝たきりや要介護状態のきっかけになるケースも少なくありません。背骨の圧迫骨折は気づかないうちに起きていることもあり、背中が丸くなる・身長が縮む・慢性的な腰背部痛といった形で現れることがあります。
こうした理由から、骨そのものを強くする薬物療法と同じくらい、「転ばない工夫」「転んでも大きな骨折を起こしにくくする工夫」が重要だとされています。
骨を守るためにできること
食事と栄養については、カルシウム・ビタミンD・タンパク質の3つを意識することが基本です。カルシウムは牛乳・ヨーグルト・チーズ・小魚・大豆製品・青菜などに多く含まれます。ビタミンDは魚類・きのこ類に多く、日光に当たることで皮膚でも合成されます。タンパク質は筋肉を維持し転倒予防にもつながるため、肉・魚・卵・大豆製品などをバランスよくとることが大切です。極端なダイエットや食事量の大幅な制限は骨量低下を加速させる原因になるため、注意が必要です。
運動と体操も欠かせません。骨に適度な負荷をかけることで、骨は強くなろうとする性質があります。同時に、筋力とバランス能力を高めることで転倒しにくい体づくりにもつながります。ウォーキング・かかと上げ体操(つま先立ち運動)・片足立ち(フラミンゴ体操)など、室内でもできる簡単な体操がガイドラインでも紹介されています。「毎日少しずつ」続けることが大切で、膝や腰の状態に合わせて無理のない範囲で行います。
自宅の中でできる転倒予防
骨粗鬆症の方の転倒は、病院の外・自宅の中で起こることも少なくありません。住環境の小さな工夫が、骨折リスクを大きく変えることがあります。
足元の整理として、段差や敷物のめくれをなくす、ケーブルや荷物を床に置きっぱなしにしないことが基本です。トイレ・浴室には手すりの設置を検討し、浴槽の出入りで滑らないよう滑り止めマットを敷くと安心です。照明については、夜間のトイレ歩行時に足元灯をつけるだけでも、つまずきのリスクが下がります。
こうした積み重ねが転倒リスクを下げることにつながります。ご自宅の環境が心配な場合は、ケアマネジャーや地域包括支援センターへの相談も選択肢のひとつです。
薬物療法について
骨粗鬆症のガイドラインでは、骨折リスクが高い方に対して骨を強くする薬を適切に用いることで、骨折リスクを減らせることが示されています。現在使われる骨粗鬆症治療薬にはいくつかのタイプがあり、骨が壊れるのを抑えるものや骨を新たに作る働きを促すものなど、作用の方向性が異なります。
どの薬が適切かは、年齢・既往歴(すでに圧迫骨折があるかどうかなど)・腎機能・他の薬との兼ね合いなどを踏まえて判断します。「薬は怖いから」と何もせずに放置してしまうと、骨折リスクが高い状態が続いてしまいます。薬物療法はあくまで「転倒・骨折を防ぐための一つの道具」として、生活習慣の工夫と組み合わせて考えることが重要です。
当院での骨粗鬆症・転倒予防の取り組み
当院では、骨密度検査・血液検査(カルシウム・ビタミンDなど)・背骨や腰のレントゲンなどを組み合わせて、骨の状態と骨折リスクを評価します。骨密度の数値だけでなく、生活習慣・転倒歴・既往骨折の有無・他の病気との関係も含めて総合的に確認していきます。
その上で、食事・運動・日常生活の工夫についてのアドバイスと、必要に応じた骨粗鬆症治療薬の検討を行います。膝や腰の痛みがあって運動に踏み出せない方には、整形外科・リハビリテーション科とも連携しながら、「痛みを悪化させない範囲でできる運動」を一緒に考えることができます。「骨を強くする」「転びにくい体をつくる」両面からサポートできるのが、内科と整形外科・リハビリテーション科を併せ持つ当院の強みのひとつです。
「まだ骨折していない今」こそ相談のタイミングです
骨粗鬆症は、骨折が起きてから初めて気づかれることも多い病気です。しかし本当は、「骨折する前」から対策を始めることで、将来の骨折や寝たきりのリスクを大きく減らすことができます。
「健診で骨密度が低めと言われた」「背中が丸くなってきた気がする」「身長が若いころより低くなった」「家族に大腿骨や背骨の骨折歴がある」——こうしたサインがあれば、まだ骨折していない今こそが相談のタイミングです。
当院では、地域のかかりつけ医として、骨粗鬆症の予防から治療・転倒予防まで、一人ひとりの状態と生活に合わせて一緒に取り組んでいきたいと考えています。どうぞお気軽にご相談ください。
友成第二医院(文京区護国寺)/内科・整形外科・リハビリテーション科