肩が痛いときに
── 四十肩・五十肩、頚椎由来、心疾患との違い ──
「肩が痛くて腕が上がらない」というご相談
「上の棚の物を取ろうとすると肩が痛い」「夜中に肩がズキズキして目が覚める」「服を着替えるときに腕が回らない」——中高年以降でこのような症状があると、多くの方が「四十肩・五十肩かな?」と心当たりを感じるのではないでしょうか。
実際、四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)は肩の痛みの原因として非常に多い病気ですが、なかには頚椎(首)からくる痛みや、まれに心臓の病気が隠れていることもあります。この記事では、「四十肩・五十肩の特徴」「頚椎由来の痛みとの違い」「心臓の病気が疑われるサイン」について整理していきます。
四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)とは?
四十肩・五十肩は、肩関節を包む組織(関節包)や腱板(けんばん:肩の動きを支える筋肉と骨をつなぐ構造)などに炎症が起こり、痛みと動かしにくさが出る病気です。正式には「肩関節周囲炎」と呼ばれます。
40〜60代に多く、特にきっかけなく徐々に痛みが出てくることも多いのが特徴です。腕を横から上げる・後ろに回すなど特定の動きで強く痛み、夜間に痛みが強くなって眠れないという訴えもよくみられます。進行すると肩の可動域(動かせる範囲)が狭くなり、日常生活の動作全般に支障が出てきます。
症状の経過は一般的に「痛みが強い時期」「固まりが進む時期」「少しずつ動くようになる時期」の3段階に分かれ、数か月から1年以上かけて変化していくことが多いとされています。「いつかは自然に治る」といわれることもありますが、放置すると固まりが長引いたり、回復が遅れたりすることもあるため、適切な時期からリハビリや治療を始めることが大切です。
頚椎(首)からくる肩の痛みとの違い
肩の痛みと似た症状を起こすものとして、「頚椎症(けいついしょう)」「頚椎椎間板ヘルニア」など、首の骨や神経のトラブルがあります。肩が痛いと思っていたら、実は首が原因だった——というケースは決して珍しくありません。
頚椎由来の痛みの特徴は、首を動かすと痛みやしびれが増すこと、肩だけでなく腕や手の方まで痛みやしびれが広がること、「ジンジン」「ビリビリ」といった神経痛のような感覚があることです。手の細かい動作がしづらい・力が入りにくいといった症状を伴う場合もあります。
一方、四十肩・五十肩は、腕を横から上げる・後ろに回すなど肩関節そのものの動きで痛みが出やすく、手や指先のしびれはないことが多いという違いがあります。ただし、実際には両方が混在しているケースもあるため、診察・検査での見極めが重要です。
心臓の病気が隠れている肩の痛みとは
肩から左腕にかけての痛みの一部には、心臓の病気(狭心症・心筋梗塞など)からの「放散痛(関連痛)」である場合があります。これは、心臓と肩・腕の痛みを伝える神経が近い経路を通っているために起こる現象です。
次のようなサインがある場合は、整形外科的な評価だけでなく、内科・循環器的な評価も必要です。胸の中央から左側にかけての違和感や圧迫感を伴う、力仕事・運動・階段の上り下りなど体を動かしたときに痛みが増して休むと楽になる、冷や汗・息苦しさ・吐き気を伴う——こうした場合は、肩の病気としてだけ扱うのではなく、心臓の状態も確認することが大切です。
特に、高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙歴など心臓病のリスクが重なっている方では、「肩こりかと思っていたら心臓だった」という可能性を念頭に置いておく必要があります。「肩だけの痛みだから大丈夫」と自己判断せず、気になるサインがあれば早めにご相談ください。
診察・検査と治療の選択肢
当院では、肩の痛みでご来院された方に対して、まずどの動きで痛みが出るか・夜間痛の有無・首の動きで症状が変化するか・手や腕のしびれや筋力低下がないかなどを丁寧に確認します。必要に応じてレントゲンやMRI検査(筋肉・腱・神経などの詳細な評価)を組み合わせ、四十肩・五十肩なのか頚椎由来なのか、あるいは他の原因が考えられるかを総合的に判断します。胸の症状を伴う場合や心疾患リスクが高い方には、内科的な評価(心電図・血液検査など)も合わせて行います。
治療の選択肢としては、痛みや炎症を抑える内服薬・外用薬、関節内注射やトリガーポイント注射(痛みの引き金となっている部位への注射療法)、温熱・電気治療などの物理療法、そして可動域訓練・ストレッチ・筋力トレーニングを組み合わせた運動療法・リハビリテーションがあります。
「痛いから動かさない」でいると、かえって肩の固まりが進んでしまうことがあります。痛みの程度に合わせて、少しずつ安全に動かしていくことが回復への近道であり、リハビリテーションの専門スタッフと一緒に取り組んでいくことが大切です。
こんな場合は早めに受診を
次のような症状がある場合は、「そのうち治るだろう」と様子を見続けず、早めにご相談ください。
- 夜も眠れないほど肩が痛い
- 服の着脱など、日常生活が大きく制限されている
- 手や指のしびれ・力の入りにくさを伴う
- 胸の違和感・息苦しさ・冷や汗を伴う肩から腕にかけての痛み
特に最後の項目は、心臓の病気が疑われるサインです。内科・整形外科の両面から評価できる当院の特性を活かして、「何が原因かを含めて」総合的に診ていきます。
受診を迷っている方へ
「肩の痛みくらいで病院に行くほどでもないかな」「少し様子を見てから」と迷われる方も多いと思います。しかし、四十肩・五十肩は対処が遅れると固まりが長引き、回復に時間がかかることもあります。頚椎由来の神経症状や心疾患のサインは、早期に気づくことが特に重要です。
「肩が痛くて腕が上がりにくい」「夜間の痛みがつらい」「手や腕にしびれも出てきた」「胸の症状も気になる」——こうした悩みがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
当院では、整形外科・リハビリテーション科と内科の視点を組み合わせながら、「肩だけを見る」のではなく、からだ全体の状態や生活背景も含めて一人ひとりに合ったケアを一緒に考えていきます。「痛みを和らげること」と「動ける体を取り戻すこと」の両方を目指しながら、日常生活の質を改善するお手伝いができればと考えています。
友成第二医院(文京区護国寺)/内科・整形外科・リハビリテーション科