痛みの考え方「総論」
── どんなときに受診を考えるか ──
痛みは「からだからのサイン」
頭痛・腹痛・胸の痛み・腰痛・関節痛——「痛み」はとても不快な症状ですが、「からだに何か異変がある」という大切なサインでもあります。一方で、「痛い=すべて緊急」というわけではなく、様子を見てよい痛みと、すぐに受診すべき痛みがあります。
「病院に行くほどではないかな」と迷いながら様子を見ているうちに、対処が遅れてしまうケースがある一方で、「すぐに救急に行くべきだったか」と後から不安になることもあります。このブログではこれまで、のどの痛み・頭痛・腰痛・膝の痛み・肩の痛みなど、部位ごとに詳しくお伝えしてきましたが、この記事では「痛みをどう評価するか」という総論として、受診の目安の考え方をまとめてお伝えします。
痛みを整理する5つの視点
痛みを評価するときに、次の5つの視点で整理しておくと、受診の判断がしやすくなります。また、受診した際にこれらを医師に伝えると、診断の助けになります。
①いつから痛いか——「突然・急に」始まった痛みと、「じわじわと徐々に」強くなってきた痛みでは、緊急性が異なることがあります。突然の激しい痛みは、特に注意が必要なサインです。
②どこが痛いか——部位がはっきりしているか、広い範囲に広がっているかも重要です。「胸が痛い」「腹全体が痛い」のように広範囲の場合は、内臓の病気が関係していることがあります。
③どんな痛みか——ズキズキ・締めつけられる・刺すような・ピリピリするなど、痛みの「質」も診断の手がかりになります。たとえば「締めつけられる胸の痛み」は心臓由来の可能性を想起させます。
④何をすると変化するか——動いたとき・深呼吸したとき・食事の前後など、痛みが強くなる・楽になる条件があると、原因の絞り込みに役立ちます。安静にしても全く変わらない痛みは、緊急性が高いことがあります。
⑤他にどんな症状を伴うか——発熱・息切れ・吐き気・しびれ・冷や汗など、痛みと一緒に出ている症状は、診断に大きく影響します。こうした「随伴症状」がある場合は、より急いで受診を検討してください。
「様子を見てよい痛み」の一例
すべての痛みがすぐに受診を要するわけではありません。軽い筋肉痛、一時的な肩こり・腰痛で休むと改善し日常生活に大きな支障がないもの、寝不足や眼精疲労が原因と思われる軽い頭痛で休息で改善するもの——こうした痛みは、多くの場合、安静・ストレッチ・市販の痛み止めなどで短期間のうちに改善します。
ただし、「同じ場所の同じ痛みが何度も繰り返す」「少しずつ頻度や強さが増している気がする」「日常生活(仕事・家事・睡眠)に支障が出始めた」という場合は、「本当に単純な痛みかどうか」を一度確認しておいた方が安心です。慢性的な痛みは「慣れてしまう」ことで重大なサインを見落とすリスクがあります。
「すぐ受診したい痛み」のサイン
次のような痛みは、緊急性を伴う病気が隠れている可能性があります。
- 突然の激しい頭痛(今まで経験したことのない痛み)
- 胸の中央から左側にかけての締めつけ・圧迫感、肩・腕・あごへの広がりを伴う痛み
- 安静にしていても治まらない胸痛や息苦しさ
- 片側の手足の脱力・しびれ・ろれつが回りにくいといった症状を伴う頭痛
- 腹部の激痛(冷や汗・嘔吐・血便・黒色便を伴うもの)
- 高熱とともに関節や腰に強い痛みが出ている
- けが・転倒後に体重をかけられない・明らかな変形を伴う骨の痛み
これらは、くも膜下出血・心筋梗塞・脳卒中・腸閉塞・重篤な感染症・骨折など、一刻を争う可能性がある状態のサインです。「様子を見よう」とためらわず、救急外来への受診も含めて早急に対応してください。
「いつ受診するか」迷ったときの考え方
緊急サインには当てはまらないが、「このままで大丈夫か」と不安が続いている——そんな場面で迷ったときのひとつの目安として、次のような状況になった時点で「かかりつけ医に一度相談する」ことをおすすめします。
痛みが数日続き、日常生活(仕事・家事・睡眠)に影響し始めている、市販薬を数日使っても改善が乏しい、「このまま放置していてよいのか」という不安な気持ちが続いている——こうした状態になれば、受診のタイミングとして考えてください。
特に、市販の痛み止めを「効いている間だけ」と繰り返し使い続けることは、痛みの原因を見えにくくしたり、薬の副作用(胃への負担など)が蓄積するリスクがあります。「市販薬でなんとかなっているから大丈夫」という状態が長く続く場合こそ、一度きちんと原因を評価しておく価値があります。
かかりつけ医の役割:「怖いサインがないか」を確認する
痛みの相談をかかりつけ医に持ち込むことで、次のような評価が可能になります。緊急性のある病気のサインがないかを確認する、画像検査(レントゲン・エコー・MRIなど)や血液検査が必要かを判断する、整形外科・脳神経外科・循環器内科・消化器内科など、専門医療機関への紹介が必要かを見極める——かかりつけ医はこうした「入口とハブ」の役割を担います。
「痛みの場所や性質によって、どの科に行けばよいかわからない」という場面もよくありますが、まずかかりつけ医に相談することで、方向性が決まることがほとんどです。このブログの「何科に行けばいいかわからないときは」という記事もあわせてご参照ください。
当院での対応について
当院では、「どこかが痛い」「続いている痛みが心配」といったご相談を内科・整形外科・リハビリテーション科の視点を組み合わせながらお受けしています。頭痛・胸の痛み・腹痛・むくみを伴う痛みなどの内科的な評価から、腰痛・膝の痛み・肩の痛み・しびれなどの整形外科的な評価まで、幅広く対応できることが当院の強みのひとつです。
「この痛みは何科に行けばいいかわからない」「市販薬では追いつかなくなってきた」「健診で何か指摘されたうえに体の痛みも続いている」——そうした複合的な悩みも、一か所でまとめて相談いただけます。痛みの原因をきちんと整理した上で、必要であれば専門医療機関へのご紹介も行います。
「なんとなく痛い」を放置しないために
「たいしたことないだろう」と思いながら何週間も痛みを抱えている方は、実際にとても多くいらっしゃいます。しかし、慢性的な痛みは生活の質を下げるだけでなく、睡眠やストレス・意欲にも影響を及ぼします。また、原因によっては、早めに対処することで根本的な改善が期待できるものもあります。
「この痛みをちゃんと診てもらいたい」「急ぎではないけれど不安が続いている」——そんなときは、どうぞお気軽にご相談ください。
友成第二医院(文京区護国寺)/内科・整形外科・リハビリテーション科
参考
・厚生労働省「慢性疼痛治療ガイドライン」p001 慢性疼痛治療ガイドライン 日本語大扉.indd
・神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン 改訂第2版 日本ペインクリニック学会