過敏性腸症候群(IBS)
── 検査で異常がないのにつらい「おなかの不調」 ──
「検査は異常なし」と言われたのにおなかがつらい方へ
おなかがゴロゴロして下痢や便秘を繰り返す、通勤・通学の途中で急にトイレに行きたくなる、検査をしても「特に異常はありません」と言われてしまう——こうしたお悩みは、過敏性腸症候群(IBS:Irritable Bowel Syndrome)の方によく見られます。
命に関わる病気ではありませんが、仕事・学校・外出に大きな制限が生じることがあり、生活の質を大きく下げてしまう病気です。「気のせいと思われているかもしれない」「どこに相談すればいいかわからない」と感じながら一人で抱え込んでいる方も多くいらっしゃいます。この記事では、過敏性腸症候群の特徴・診断の流れ・治療の考え方についてお伝えします。
過敏性腸症候群とはどんな病気か
大腸自体に目立った炎症や腫瘍がないにもかかわらず、腹痛・おなかの張りと便通異常(下痢・便秘)が長く続く状態を過敏性腸症候群と呼びます。腸そのものに構造的な異常はないのに、腸の動きや感覚が過敏になっている状態です。
症状のパターンによって大きく3つのタイプに分けられます。下痢型は緩い便や水様便が多く、特に朝や緊張時に悪化しやすいタイプです。便秘型はコロコロとした硬い便・残便感・排便に時間がかかるタイプです。混合型は下痢と便秘を交互に繰り返すタイプで、「最近また変わってきた」と感じる方もいらっしゃいます。
原因としては、ストレスや自律神経の乱れ、腸内細菌バランスの変化、腸と脳の間の情報伝達の過敏性(「腸脳相関」と呼ばれます)などが関係していると考えられています。感染性腸炎(食中毒など)をきっかけに発症する「感染後IBS」と呼ばれるタイプもあります。
よくある症状と日常生活への影響
朝、家を出る前に何度もトイレに行ってしまう、電車や会議など「すぐトイレに行けない」状況が不安でたまらない、腹痛が排便で少し楽になるがまたすぐ痛くなる、おなかが張って苦しくガスが溜まりやすい——こうした症状が毎日のように続くと、生活への影響は非常に大きくなります。
遠出や外食を避けるようになった、満員電車に乗れなくなった、大事な場面で集中できない、仕事や学業のパフォーマンスが落ちた——そうした訴えを持つ方が多くいらっしゃいます。症状そのもののつらさだけでなく、「また起きるかもしれない」という不安が生活を狭めてしまうことも、IBSの特徴のひとつです。
診断の流れ
「おなかの不調」の原因はIBSだけではありません。炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)、大腸ポリープ・大腸がん、感染性腸炎、甲状腺機能の異常など、他にもさまざまな原因が考えられます。そのため、まず血液検査・便検査・腹部超音波などを組み合わせて「他の病気が隠れていないか」を確認します。大腸内視鏡検査が必要と判断した場合は、近隣の消化器内科・内視鏡専門医療機関にご紹介しています。
これらに明らかな異常がなく、症状の経過や特徴が診断基準(腹痛が月に3日以上・3か月以上続き、排便と関連するなど)に合致する場合にIBSと診断されます。「検査で異常なし=何もない」ではなく、「検査で異常がないことも診断の重要な情報のひとつ」という考え方で進めていきます。
治療・対処のポイント
IBSの治療は、症状のタイプや生活への影響の程度に合わせて、複数のアプローチを組み合わせて行います。おなかの動きを整える薬、腸内環境を調整する整腸剤、下痢型・便秘型それぞれのタイプに応じた薬、必要に応じて抗不安薬や漢方薬を含めた全身の調整——こうした薬物療法を症状に合わせて調整しながら続けていきます。
生活習慣の面では、朝食を抜かないこと、カフェイン・アルコール・脂っこいもの・刺激物を控えめにすること、睡眠不足や過労を避けること、適度な運動やストレス発散の手段を意識的に取り入れることが大切です。「何を食べると症状が出やすいか」を記録して把握しておくことも有用です。
不眠・ストレス・メンタル不調との関係が深い病気でもあり、このブログの「不眠・ストレス」の記事で触れた内容とも密接につながっています。腸の症状と心身の状態を切り離さず、総合的に診ていくことが改善への近道です。
「気のせい」ではありません
IBSは検査で大きな異常が見つかりにくいため、「気のせい」「ストレスのせい」と片付けられてしまうことがあります。しかし、過敏性腸症候群はれっきとした「腸の機能の病気」として国際的な診断基準にも定められており、適切な治療の対象です。自分を責めたり「我慢するしかない」とあきらめる必要はありません。
症状を完全にゼロにすることは難しい場合もありますが、薬物療法と生活の工夫を組み合わせることで「かなり楽になった」「以前ほど生活が制限されなくなった」と感じる方は多くいらっしゃいます。
当院での対応について
当院では、「おなかの不調が続いている」「検査で異常なしと言われたがつらい」「どこに相談すればいいかわからなかった」といったご相談を内科・総合診療の立場からお受けしています。まず問診で症状の経過・パターン・生活習慣・ストレスの背景などを丁寧に確認し、血液検査・便検査・腹部超音波などを組み合わせて他の病気を除外していきます。大腸内視鏡検査が必要と判断した場合は、近隣の消化器内科・内視鏡専門医療機関へご紹介しますので、安心してご相談ください。
高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病で定期通院されている方の中にも、おなかの不調を長年抱えたままにしている方がいらっしゃいます。かかりつけ医として、こうした悩みもまとめてご相談いただける環境を大切にしています。
「おなかのことで困っている」と感じたら
「病院に行くほどのことではない」「また検査しても異常なしと言われるだけかも」——そう思ってためらっている方こそ、一度ご相談ください。IBSは適切な対処で生活の質を改善できる病気です。
「通勤・通学が不安」「外出が制限されている」「毎朝おなかのことが心配で憂鬱」——そんな日常を少しでも楽にするお手伝いができればと考えています。どうぞお気軽にご来院ください。
友成第二医院(文京区護国寺)/内科・整形外科・リハビリテーション科
参考