血液検査の読み方
── 「異常なし/要注意」の背景を知る ──
結果用紙を「よく分からないまま捨ててしまっている」方へ
健康診断や採血を受けると、多くの数字が並んだ結果用紙が返ってきます。「異常なしと書いてあったからそれで終わり」「要注意と書いてあるけれど、何がどう悪いのかわからない」「数字が多すぎてどこを見ればよいかわからない」——そういった方がほとんどではないでしょうか。
血液検査の項目は、体のさまざまな機能を映す「スナップ写真」のようなものです。一枚の写真だけで全てはわかりませんが、定期的に撮り続けることで「変化の流れ」が見えてきます。この記事では、よく並んでいる主な検査項目の意味と、「少し異常値」をどう受け取ればよいかについてお伝えします。
主な検査項目とその意味
血液・貧血に関する項目
赤血球・ヘモグロビン・ヘマトクリットは、貧血の有無をみる項目です。ヘモグロビンは血液中で酸素を運ぶたんぱく質であり、これが低い状態(貧血)になると、体の各組織に酸素が十分に届きにくくなります。慢性的なだるさ・息切れ・顔色の悪さなどが現れることがあり、このブログの「慢性的なだるさ・疲れが取れないときに」の記事でお伝えした倦怠感の原因のひとつでもあります。貧血の原因には鉄分不足・ビタミン不足・慢性疾患・骨髄の問題などがあり、「なぜ貧血なのか」の原因を調べることが重要です。
白血球は感染症・炎症・アレルギーなどがあると上昇しやすく、逆に低い場合は免疫力の低下や骨髄の問題が疑われることがあります。血小板は血を止める働きをする細胞であり、極端に少ないと出血しやすくなることがあります。
肝臓・胆道に関する項目
AST(GOT)・ALT(GPT)・γ-GTPは、肝臓や胆道の状態をみる項目です。ASTとALTは肝細胞が傷ついたときに血液中に漏れ出してくる酵素であり、高い場合は脂肪肝・アルコール性肝障害・ウイルス性肝炎(B型・C型)・薬剤性肝障害などが原因として考えられます。γ-GTPはアルコールや胆道の問題に敏感に反応する項目で、「お酒をよく飲む方」で高くなりやすいことが知られています。「健診でずっと肝臓の数値が高いが、そのままにしている」という方は一度評価しておくことをおすすめします。
腎臓に関する項目
クレアチニンとeGFR(推算糸球体濾過量)は、腎臓のろ過機能をみる指標です。クレアチニンは筋肉が使われた後の老廃物で、腎臓の働きが低下するほど血液中に溜まりやすくなります。eGFRは「腎臓が1分間にどのくらいの血液をろ過できているか」を示す数値で、60を下回る状態が3か月以上続く場合などに慢性腎臓病(CKD)と診断されます。このブログの「慢性腎臓病(CKD)」の記事で詳しくお伝えしたように、腎機能の低下は自覚症状が出にくく、健診での早期発見が非常に重要です。
血糖・糖尿病に関する項目
血糖値とHbA1cは、糖尿病やその予備軍の評価に使います。血糖値は採血時点での血液中の糖の量を示し、食事の影響を受けやすい値です。HbA1cは過去1〜2か月の血糖の平均的な状態を反映するため、「食事を抜いてきたから今日だけ血糖が低かった」というごまかしが通じない指標です。HbA1cが6.5%以上で糖尿病、6.0〜6.4%は糖尿病予備軍として管理の対象になります。
脂質に関する項目
LDLコレステロール(悪玉)・HDLコレステロール(善玉)・中性脂肪(トリグリセライド)は、動脈硬化のリスク評価に重要な項目です。LDLが高い・HDLが低い・中性脂肪が高い状態が続くと、血管の壁にプラークが積み重なり、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まります。このブログの「脂質異常症」の記事でお伝えしたように、自覚症状がないまま進行するのが脂質異常症の特徴です。
尿酸・炎症反応など
尿酸値はこのブログの「高尿酸血症・痛風」の記事でお伝えしたように、高い状態が続くと痛風発作や腎機能低下につながります。CRP(C反応性たんぱく)は炎症の程度を示す指標で、感染症・自己免疫疾患・がんなどで上昇することがあります。
「少し高い/少し低い」をどう捉えるか
基準値から少し外れているからといって、すぐに病気とは限りません。基準値はあくまで「健康な人の多くが含まれる範囲」であり、個人差もあります。一方で、「ギリギリ基準値内」でも他の項目との組み合わせや過去の変化をみると、将来のリスクが見えてくることがあります。
大切なのは、一回だけの数値で決めつけないこと、そして過去との比較で「じわじわ悪化していないか」の流れを見ることです。「今年は昨年より少し上がった」という変化の方向性の方が、「今年の数値が基準値内か否か」より重要なことが多くあります。
かかりつけ医に持ってきてほしいもの
「健診結果を持って相談に行こう」と思ったとき、最新の結果に加えて、可能であれば過去数年分の健診結果(コピーや原本)も一緒にお持ちいただけると、より丁寧な評価ができます。
過去の結果があることで、「今どのあたりにいるのか」「この先どの方向に向かいやすいのか」「今のうちに何をしておくとよいか」を一緒に整理することができます。紙の結果がない場合でも、会社の健診であれば人事・総務部門に過去の結果を請求できることがあります。
「異常なしと言われたけれど、本当に大丈夫か確認したい」「要注意と書かれていた項目について詳しく聞きたい」「薬を飲んでいるが、検査値への影響が気になる」——こうしたご相談も大歓迎です。
当院での対応について
当院では、健康診断の結果をお持ちいただいた上でのご相談・再検査・経過観察を内科・総合診療の立場からお受けしています。「健診で引っかかったが、どこに行けばよいかわからなかった」という方の最初の相談窓口として、血液検査・尿検査・心電図・血圧測定などを組み合わせて評価します。
高血圧・糖尿病・脂質異常症・慢性腎臓病など、複数の項目にわたって管理が必要な方でも、かかりつけ医としてまとめて継続的にフォローすることができます。専門医療機関への紹介が必要と判断した場合は、適切にご案内します。
「結果をそのままにしない」ことが最初の一歩
健診を受けることは大切ですが、「受けただけで終わり」にしてしまうと、本来得られるはずの恩恵が半減してしまいます。数値の変化に早めに気づき、生活習慣の見直しや治療につなげることが、健診を受ける本来の意味です。
「結果用紙が手元にあるけれど、意味がよくわからないまま置いてある」——そんな方は、ぜひ一度持ってきてください。一緒に読み解くところから始めていきます。
友成第二医院(文京区護国寺)/内科・整形外科・リハビリテーション科
参考
・特定健康診査の検査項目 | 生活習慣病などの情報(e-ヘルスネット) | 健康日本21アクション支援システム Webサイト