フレイル・サルコペニア
── 「年のせい」で済ませない、筋力と体力の衰え ──
最近「つまずきやすくなった」「疲れやすくなった」方へ
少しの段差でつまずくようになった、ペットボトルのふたが開けづらくなった、買い物袋を持って歩くのが以前よりしんどい、外出がおっくうになり家にいる時間が増えた——こうした変化を「年のせいだから仕方ない」と受け流していませんか。
こうした変化は加齢とともに自然に起こるように感じられますが、実は「フレイル」や「サルコペニア」と呼ばれる状態のサインである可能性があります。そしてこの段階は、適切な対策を始めることで「要介護状態への移行を遅らせる、あるいは防ぐ」ことができる大切なタイミングです。この記事では、フレイル・サルコペニアとは何か・どう対処するかについてお伝えします。
フレイル・サルコペニアとはどんな状態か
フレイルとは、加齢に伴い体力・筋力・認知機能・気力などが少しずつ低下し、「健康な状態」と「要介護の状態」の中間にあるような状態を指します。日本語では「虚弱」と訳されることもありますが、「病気ではないけれどもろくなっている状態」というイメージが近いかもしれません。フレイルの段階で適切に介入することで、要介護への移行を遅らせたり防いだりできる可能性が高まることが、多くの研究で示されています。
サルコペニアとは、加齢などにより筋肉量・筋力・身体機能が低下した状態を指します。フレイルの中核的な要素のひとつであり、筋力の低下が転倒・骨折・寝たきりのリスクを高める入り口になります。このブログの「骨粗鬆症」の記事でお伝えしたように、骨密度の低下と筋力の低下は同じ時期に重なって起きやすく、両方を意識した対策が重要です。
フレイルは身体的な側面だけでなく、「外出が減った」「人と話す機会が少なくなった」「何もする気が起きない」といった社会的・精神的な側面でも進行します。身体・社会・精神の三つの側面から総合的に捉えることが大切です。
自分の状態をチェックしてみる
次のような変化が複数当てはまる場合、フレイル・サルコペニアの対策を意識し始めることが大切です。6か月で2〜3kg以上の体重減少がある、握力が弱くなったと感じる(目安として男性26kg未満・女性18kg未満)、歩く速度が遅くなった・信号が変わる前に渡り切れないことがある、椅子から立ち上がるときに手で支えないと難しい、1日の外出回数が減っている・ほとんど家にいる——こうした変化が複数重なっている場合は、一度評価しておく価値があります。
「一つ二つ当てはまるが、まだ日常生活はできている」という段階こそが、対策を始めるベストタイミングです。要介護状態になってから動くより、この段階で取り組む方がはるかに効果的です。
何歳からでもできる対策
フレイル・サルコペニアの対策の柱は、**栄養(特にたんぱく質)と運動(特に筋力トレーニング)**の二つです。
食事面では、たんぱく質を意識して摂ることが最も重要です。肉・魚・卵・大豆製品・乳製品などを、1日3食に分散してとることが効果的とされています。「1回の食事でまとめてとればよい」ではなく、毎食少しずつ摂ることで筋肉の合成がより促されます。食欲が落ちている方・体重が減ってきている方は、このブログの「慢性的なだるさ」の記事でも触れた栄養状態の評価を受けることもお勧めします。
運動面では、椅子からの立ち座りをゆっくり繰り返すスクワット動作、かかと上げ・つま先立ち運動、転倒に注意しながらの片足立ち(つかまり立ちからでもOK)などが、自宅でも取り組みやすい筋力トレーニングとして有効です。歩く機会を増やすことも大切ですが、「ただ歩くだけ」では筋力の維持に不十分な面もあり、筋力トレーニングとの組み合わせが効果的です。
「膝や腰が痛くて運動できない」という方も多くいらっしゃいます。当院の整形外科・リハビリテーション科と連携することで、痛みや動きの制限を踏まえた上で、その方に合った安全な運動メニューを一緒に考えていくことができます。「運動したいけれど体の痛みが不安」という方こそ、ぜひご相談ください。
こんな変化は早めに評価を
次のような場合は、フレイルへの対策とあわせて、背景にある病気の評価も重要です。
- 体重が急に減った(意図せず)・食欲がない状態が続いている
- 強い倦怠感・貧血症状を伴っている
- 転倒して骨折したことがある・繰り返している
- 認知機能の低下が気になる(もの忘れ・日時の混乱など)
特に骨折については、このブログの「骨粗鬆症」の記事でお伝えしたように、転倒によるちょっとした衝撃で骨折しやすくなっている可能性があり、骨密度の評価もあわせて検討することが大切です。また、甲状腺疾患・糖尿病・慢性腎臓病など全身の病気が筋力低下・体重減少に関係していることもあります。
当院での対応について
当院では、「最近体力が落ちた気がする」「転びやすくなった」「筋力が衰えてきた感じがする」といったご相談を内科・整形外科・リハビリテーション科が連携した立場からお受けしています。体重・握力・歩行状態などの評価、血液検査による栄養状態(アルブミン・総たんぱくなど)・骨代謝・生活習慣病の確認、必要に応じた骨密度測定などを組み合わせて、現在の状態を総合的に把握します。
その上で、食事・運動・生活リズムの見直しについて具体的なアドバイスを行い、リハビリテーションへのつなぎや、必要に応じた専門医療機関への紹介も行います。「まだ介護が必要なほどではないが、この先が心配」という段階でのご相談を特に歓迎しています。
「まだ大丈夫」が一番危ないタイミングです
「年のせいだから仕方ない」「まだ自分でなんとかできている」——そう思っているうちが、実は対策を始めるタイミングとして最も効果的な段階であることが多いです。フレイルは「気づいたら要介護になっていた」という経過をたどりやすく、早めに動くほど改善の余地が大きくなります。
「最近なんとなく体が衰えてきた気がする」「転びやすくなった」「足腰が心配」——そんな方は、どうぞお気軽にご相談ください。
友成第二医院(文京区護国寺)/内科・整形外科・リハビリテーション科
参考
・フレイル診療ガイド 2018年版 | 刊行物 | 機関誌・刊行物 | 一般社団法人 日本老年医学会