「健康診断オールA」を目指す必要はある?
── 検査結果との上手な付き合い方 ──
「Aが並んでいないと不安」と感じていませんか?
新年度の健診結果が返ってくるこの時期、「去年より判定が悪くなった」「Aが並んでいないから不安」と感じてご相談に来られる方が増えています。一方で、「とりあえず要再検査はないから、まあいいか」と結果用紙をそのまましまい込んでしまう方も少なくありません。
まずお伝えしたいのは、「オールA=健康」「BやCがある=不健康」という単純な話ではないということです。健診結果はあくまで「体の一部を切り取ったスナップ写真」であり、年齢・体質・生活状況・家族歴などとあわせて考える必要があります。
この記事では、健診結果との上手な付き合い方、優先すべきポイント、無理なく続けられる「自分なりの合格ライン」の見つけ方についてお伝えします。
判定よりも「どこがどうズレているか」を見る
健診の判定欄には、A(異常なし)・B(軽度異常)・C(要経過観察)・D(要精査)・E(要治療)などが並ぶことが多いと思います。この記号だけを見て一喜一憂するよりも、「何の項目が、どの方向にズレているか」に注目した方が、健康管理としては意味があります。
たとえば、血圧が少し高め(上が140近い)、LDLコレステロールがやや高い、空腹時血糖やHbA1cが上がり気味、肝機能(AST・ALT・γ-GTP)が基準値を少し超えている、BMIが25を超えてきた——これらは、それぞれバラバラの「軽い異常」に見えますが、組み合わせて見ると「生活習慣病の芽」が見えてきます。
逆に、単発の項目が少し外れているだけなら、生活や体質の範囲内として経過を見てもよいこともあります。「どこを優先的に整えるべきか」は、値のズレ具合・組み合わせ・過去からの変化(じわじわ悪化していないか)で変わってきます。このブログの「血液検査の読み方」の記事も、検査項目ごとの意味を理解する上であわせてご参照ください。
「オールA主義」がかえってストレスになることも
最近は、健康志向の高まりから「毎年の健診ですべてA判定を目指す」「少しでも基準から外れると強い不安を感じる」という「オールA主義」の方も増えています。
もちろん数値が良いに越したことはありませんが、年齢とともに完全なオールAを維持することは難しくなっていきますし、無理なダイエットや過度な運動でかえって体調を崩すこともあります。「少しの異常も許せない」という気持ち自体が、大きなストレスになることもあります。
「限られた時間とエネルギーの中で、どこを優先して整えるか」——この視点を持つことが、長い目で見て健康と上手に付き合うコツです。
優先順位をつけるとしたら、どこから?
① 「命に直結しやすいもの」から
高血圧(特に上が140以上が続く)、糖尿病・血糖値の大きな異常、明らかな心電図異常(不整脈・虚血性変化など)、肝機能・腎機能の大きな異常——これらは脳卒中・心筋梗塞・腎不全などに直結しやすい項目です。判定がC〜Eの場合は、「忙しいからそのうち」ではなく、まず医療機関で一度しっかり評価することをおすすめします。
このブログの「高血圧」「糖尿病」「慢性腎臓病(CKD)」の記事も、それぞれの項目を深く理解する上で参考になります。
② 「じわじわ悪さをするもの」を次に
軽度の脂質異常(LDLや中性脂肪の上昇、HDL低下)、軽〜中等度の肥満(BMI25以上)、軽い血圧・血糖の上昇傾向——これらは短期的には自覚症状がほとんどありませんが、10年スパンで見ると動脈硬化を進める要因になります。生活習慣(食事・運動・睡眠・飲酒・喫煙など)を見直すことで、薬に頼らず改善できる余地が大きいゾーンです。
③ 「体質や一時的な要因」も考慮
若い女性の軽い貧血、一時的な脱水・寝不足での検査値のブレ、体質的なコレステロール値の高さ——こうしたものはすぐに大きな病気につながるわけではないこともあり、「経過観察」「生活の工夫」で様子を見ることが多くなります。ただし「体質だから」と決めつけず、一度は医師と一緒に確認しておくことが安心につながります。
「今年だけ」ではなく「数年の流れ」で見る
健診結果を上手に使う上で重要なのが、今年だけでなく過去3〜5年をワンセットで見るという視点です。
毎年少しずつ血圧が上がっている、LDLコレステロールがじわじわ増えている、血糖値・HbA1cが境界域に近づいてきている——こうした「ゆっくり悪化しているトレンド」は、今が手を打つチャンスだと教えてくれます。
逆に「今年だけ突出して悪い」「生活が大きく乱れていた時期のデータ」であれば、その背景を一緒に整理し、どこまで戻せそうかを検討することができます。健診結果を持参いただければ、当院でも過去の推移を参考に分かりやすくご説明します。
「自分なりの合格ライン」を一緒に決める
大切なのは、他人と比べた「完璧な結果」ではなく、「自分にとって現実的で守れる合格ライン」を決めることです。
たとえば血圧は「家庭血圧で上130台を目標にする」、体重は「いきなり理想体重ではなくまず2〜3kg減を目指す」、LDLは「動脈硬化リスクに応じた目標値を薬の有無を含めて設定する」、血糖は「HbA1cを〇%以下に保つ」——といった具合に、「ここを守れればまずOK」というポイントをかかりつけ医と一緒に決めておくと、日々の行動も定まりやすくなります。
「全部完璧に」ではなく、「大事なところから順に整える」。その積み重ねが、5年後・10年後の健康状態を大きく変えていきます。
健診結果を持って受診するときのコツ
せっかくの健診結果を、診察で最大限活かすためのポイントをまとめます。結果用紙は原本かコピーを必ず持参する、可能であれば過去数年分も一緒に(写真でも可)、気になっている症状(だるさ・息切れ・むくみ・頭痛など)があればメモしておく、「何が心配か」「どこまでなら自分は頑張れそうか」をざっくり考えておく——これだけ準備していただければ十分です。
診察では、「何がどの程度ズレているのか」「今一番優先して対策したい項目はどれか」「生活でできる工夫」と「薬を使う意味」を一緒に整理していきます。
当院での対応について
当院では、「健診結果を見てどうしたらよいかわからない」「判定がBやCで気になっている」「過去の結果と見比べて整理したい」といったご相談を内科・総合診療の立場からお受けしています。
オールAを目指すことは悪いことではありませんが、「Aでないところ=全部ダメ」と思う必要はありません。大切なのは「今の自分の体の状態を知り、優先順位をつけて、一つずつ整えていく」ことです。健診はゴールではなく、「次の1年をどう過ごすか」を考えるスタート地点です。
「どこから手を付けたらよいかわからない」「判定結果を見てもピンとこない」という方こそ、健診結果を持って一度お越しください。一緒に「完璧主義ではない、現実的で続けられる健康プラン」を考えていきましょう。
友成第二医院(文京区護国寺)/内科・整形外科・リハビリテーション科
参考