「骨折はしていないと言われたのに痛い」
── 捻挫・打撲・靭帯損傷の考え方 ──
「骨は折れていません」と言われたのに、なぜ痛い?
転倒やスポーツ中のケガで受診し、レントゲン検査の結果「骨折はありません」と言われると、多くの方はほっとされます。一方で、「それなのに痛い」「腫れが引かない」「体重をかけると怖い」といった不安が、数日〜数週間続くケースも少なくありません。
「骨折なし」と言われたものの痛みが続いている方、「このまま様子を見ていいのか」と悩んでいる方に向けて、レントゲンには写らないケガの種類と、受診の目安をお伝えします。
レントゲンで「写らないケガ」とは?
レントゲン検査でよく見えるのは「骨」です。一方、次のような部分はレントゲンには写りません。
靭帯(骨と骨をつないで関節を安定させる強い「ひも」のような組織)、筋肉・腱(力を伝える組織)、軟骨(関節のクッション部分)、関節包や関節周囲の「すじ」——これらの組織が伸びる(部分的な断裂)、切れる(完全断裂)、血がにじむような内出血を起こすと、レントゲンでは「骨折なし」と判断されても、深い痛み・腫れ・動かしにくさがしっかり残ることがあります。
つまり、レントゲンで骨折が見つからないからといって「何も損傷していない」という意味ではありません。多くの場合、捻挫・打撲・靭帯損傷・筋肉や腱の損傷といった「軟部組織のケガ」が起きており、それが痛みや腫れの原因になっています。
捻挫・打撲・靭帯損傷、それぞれのイメージ
捻挫(ねんざ)
関節に「ひねり」や「ねじれ」の力が加わり、靭帯や関節包が伸ばされたり一部切れたりした状態です。段差で足首をひねった、スポーツ中に方向転換して膝をひねった、手をついて転んで手首をひねった——こうした場面で起こります。
症状は関節周囲の痛み、腫れ・内出血(あざ)、動かしたり体重をかけると痛むなどです。「軽いねんざ」と言われても、靭帯がしっかり伸びていたり傷ついていると、数週間は違和感が続くこともあります。
打撲(だぼく)
どこかにぶつけて筋肉や皮下組織がダメージを受けた状態です。ぶつけた場所が押すと痛い、青あざ(皮下出血)が出る、深い筋肉まで打ちつけると押しただけで強い痛みが出る、といった特徴があります。筋肉の中に血がたまる「筋挫傷」のような状態になると、見た目の変形がなくても痛みや張りが長く残ることがあります。
靭帯損傷
捻挫の中でも、特に「関節を支える靭帯」が部分的または完全に切れてしまっている状態です。足首の靭帯損傷、膝の前十字靭帯・内側側副靭帯損傷、手指の靭帯損傷(突き指など)などが代表的です。
強い痛みと腫れに加えて、関節の「ぐらつき」感、スポーツや階段での不安定感が続くことがあります。靭帯損傷はレントゲンだけでは分からず、症状や触診、場合によってはMRIで評価することもあります。
受傷直後〜数日の「様子を見てよい範囲」
受傷直後の応急処置「RICE(ライス)」
ケガの初期対応として、次の4つが基本です。
- 『Rest(安静)』で無理に動かさず体重をかけない。
- 『Ice(冷却)』で氷のうや保冷剤をタオルに包んで1回15〜20分を目安に冷やす。
- 『Compression(圧迫)』で弾性包帯などを使って軽く圧迫し腫れを抑える。
- 『Elevation(挙上)』でケガの部位を心臓より少し高く上げておく。
受傷直後〜1〜2日は「動かして温める」より先に、腫れと炎症を抑えることが大切です。
「数日様子を見てよい」目安
安静にしていれば耐えられる痛み、腫れはあるが翌日以降にピークを過ぎて少しずつ引いてきている、体重をかけると痛いが支えがあれば何とか歩ける、徐々に動く範囲が広がってきている——こうした経過であれば「軽〜中等度の捻挫・打撲」として数日〜1週間程度経過を見ることもあります。
すぐに整形外科を受診すべきサイン
逆に、次のような場合は「ただのねんざ」ではない可能性があり、早めの再評価をおすすめします。
- じっとしていても非常に強い痛みが続く
- 夜間も痛みで眠れない
- 数日たっても腫れが引かない、むしろ増えている
- 皮膚の色がどんどん変わる、ぱんぱんに張っている
- 体重をかけるとどうしても無理(片足立ちができない)
- 関節がぐらぐらする感じが続く
- 動かすと「バキッ」「ズレる」ような異常な感覚がある
こうした場合、見落とされた小さな骨折(疲労骨折・骨端線損傷など)、靭帯断裂、関節内の損傷(半月板・軟骨など)が隠れていることもあります。「骨折なしと言われたから大丈夫」と我慢し続けるより、早めに整形外科で再評価を受けた方が、結果的に回復が早くなることが多くあります。
どのくらいで良くなる?回復の目安
あくまで一般的な目安ですが、軽い打撲・ねんざは数日〜2週間程度で日常生活の痛みはかなり改善します。中等度の捻挫・靭帯損傷では炎症自体は2〜3週間で落ち着いてきますが、完全に不安なく動けるまでには1〜3か月かかることもあります。重度の靭帯断裂・半月板損傷などは、保存療法で様子を見るケースから手術を検討するケースまで幅広く、個別の評価が必要です。
「1〜2週間過ぎてもほとんど変化がない」「むしろ悪くなっている」場合は、もう一度専門医に相談するサインと考えてください。
日常生活で気をつけたいこと
「痛みが引かないのは、安静が足りない」ことも
骨折がないと聞くと「動かして慣らした方がよいのかな」と思いがちですが、受傷直後〜数日は無理に動かすとかえって炎症を長引かせることがあります。しっかり休ませる時間を作ることで、結果的に回復が早くなるケースも多くあります。
一方で「ずっと動かさない」も別のリスク
痛みを怖がるあまり、いつまでもまったく動かさないでいると、関節が固くなる(拘縮)、筋力が落ちる、再発しやすくなる——といった問題が出てきます。このブログの「フレイル・サルコペニア」の記事でもお伝えしたように、「痛くない範囲で適切に動かす」ことが回復への近道です。
大切なのは、「痛みの許容範囲」を見極めながら、医師やリハビリスタッフの指示に沿って、少しずつ可動域と筋力を取り戻していく「段階的なリハビリ」です。
当院の整形外科・リハビリテーションでできること
当院では、次のようなサポートを行っています。
ケガ直後の評価(骨折の有無のチェック、必要な検査の判断)、「骨折なし」と言われたあとも続く痛みの再評価、捻挫・打撲・靭帯損傷に応じた固定・サポーター・テーピングの選択、あん摩マッサージ指圧師によるウォーターベッド・牽引・干渉波などの物理療法とマッサージで、痛みの緩和と血流改善をサポート——これらを組み合わせて、「その場しのぎ」ではなく再発しにくい体づくりを目指した治療を行っています。
リハビリは予約不要で来院順にご案内しているため、「リハビリが受けられない」ということが起きにくい体制です。MRIなど専門的な精密検査が必要と判断した場合は、近隣の医療機関へご紹介します。
「レントゲンで骨折なしと言われたけれどまだ不安」「このままスポーツに戻ってよいか迷っている」といったお悩みがあれば、一度ご相談ください。
受診のタイミングに迷ったら
最後に、次のような場合は受診の目安と考えてください。
- 受傷から2〜3日たっても、痛み・腫れがほとんど引かない
- 1週間たっても、体重をかけると強い痛みがある
- 関節の不安定感・ぐらつきが気になる
- スポーツ復帰前に「この状態で戻ってよいか」確認したい
「骨折はしていないと言われたのに痛い」という状態は、決して珍しくありません。それは「気のせい」ではなく、筋肉・靭帯・関節を守るためのサインかもしれません。我慢し続けてこじらせる前に、一緒に原因を整理し、必要な治療とリハビリの計画を立てていきましょう。
友成第二医院(文京区護国寺)/内科・整形外科・リハビリテーション科
参考