CPAP治療って、実際どんなもの?
── 検査から治療開始までの流れと、続けることで得られるもの ──
「治療をすすめられたけれど、よく分からない」方へ
「睡眠時無呼吸症候群と診断され、CPAP(シーパップ)をすすめられた」「検査を受けようか迷っているが、その先の治療がどんなものか分からない」「大変だという話も聞くけれど、実際のところどうなんだろう」——そんな段階でこの記事にたどり着いた方が多いのではないでしょうか。
すでに使い始めていて、なかなか慣れずに悩んでいる方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、CPAPとはどんな治療なのか、検査から治療開始までの流れ、続けることで何が変わるのかを順にお伝えします。そのうえで、実際に使ってみて感じることの多い点についても、包み隠さずお話しします。
結論:CPAPは「空気の力で気道を支える」治療です
まず、いちばんの基本からお伝えします。
睡眠時無呼吸症候群では、眠っている間に舌の付け根や喉の周囲の筋肉がゆるみ、空気の通り道(気道)がふさがってしまうことで呼吸が止まります。狭くなったホースがつぶれて水が流れなくなるような状態です。
CPAPは、鼻に装着したマスクからやわらかい空気を送り込み、その圧力で気道が閉じないように内側から支える治療です。薬でも手術でもなく、物理的に空気の通り道を確保する——それがCPAPの原理です。
だからこそ、使っているその晩から効果が現れます。呼吸が止まらなくなれば、体は酸素不足から解放され、脳も何度も起こされずに済みます。眠りの質そのものが変わるわけです。
日本呼吸器学会の「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」では、症状が強い方や中等症以上の方に対して、CPAPが第一選択の治療として推奨されています。
検査から治療開始までの流れ
「検査って大変そう」というイメージをお持ちの方も多いので、実際の流れをご説明します。
① 外来での問診
いびきや日中の眠気、夜間の様子、血圧や体重の経過などを伺います。ご家族から呼吸の停止を指摘されたことがあるかどうかも、大切な情報です。ここでSASが疑われれば、検査に進みます。
② 自宅での検査
入院の必要はありません。検査機器がご自宅に郵送され、普段どおりお休みいただきます。指先や鼻に小さなセンサーを装着して一晩眠るだけで、睡眠中の呼吸の状態や血液中の酸素の量を記録できます。翌朝に外して、機器をご返送いただきます。
「機械をつけて眠れるだろうか」と心配される方もいらっしゃいますが、装着するのは軽いセンサーのみで、寝返りも普通に打てます。
③ 結果説明
記録されたデータから、1時間あたり何回、呼吸が止まったり浅くなったりしていたかを確認します。この回数と自覚症状の程度から、治療の方針を一緒に決めていきます。
④ CPAP導入
治療の対象となる場合、CPAP機器をお貸し出しします。マスクの装着方法、機器の操作、お手入れの仕方などをご説明します。
⑤ 定期的な受診
その後は定期的にご来院いただき、機器に記録された使用状況のデータを確認しながら、圧の設定やマスクの調整を行っていきます。始めて終わりではなく、一緒に育てていく治療とお考えください。
なお、CPAPは購入するものではなく、医療機関からのお貸し出しという形になります。保険診療で受けられる治療です。
CPAPを続けることで、何が変わるのか
ここがいちばんお伝えしたい部分です。
先ほどのガイドラインには、CPAP使用者86名を対象としたアンケートの結果が紹介されています。そこでは、92%の方が何らかの自覚症状の改善を実感していたと報告されています。
具体的には、次のような変化が期待できます。
- 朝の目覚めと日中の眠気
「朝すっきり起きられるようになった」「日中の強い眠気がなくなった」という声は、もっとも多く聞かれる変化です。ガイドラインでも、CPAP治療によって日中の眠気が改善することが示されています。会議中の居眠りや、運転中のヒヤリとする瞬間から解放されることは、生活の質を大きく変えます。
- いびきがなくなる
気道が開いた状態を保てるため、いびきは基本的に消失します。ご家族の睡眠も守られることになり、「先に妻が喜んだ」とおっしゃる方も少なくありません。
- 血圧の改善
ガイドラインでは、CPAP治療によって血圧が低下し、減量や降圧薬に上乗せする形での降圧効果が期待できるとされています(エビデンスレベルA)。特に、薬を複数使っても下がりにくい高血圧の方で効果が報告されています。詳しくは当院ブログの薬を飲んでも血圧が下がらない方へをご覧ください。
- 将来のリスクを下げる
睡眠中の酸素不足が繰り返されると、心臓や血管に負担がかかり続けます。CPAP治療は心血管に関わる指標を改善することが示されており、使用状況が保たれていれば予後を改善する可能性も報告されています。
- 事故のリスクが下がる
日中の強い眠気は、交通事故の重要な要因です。ガイドラインでは、CPAP治療によって事故のリスクが低下することが示されています。お仕事で運転される方にとっては、特に大きな意味を持ちます。
実際に使ってみると——正直にお伝えします
ここまで良い面をお伝えしてきましたが、始めた当初に違和感を覚える方がいらっしゃることも事実です。この点を隠さずお伝えするのが、私たちの役目だと考えています。
考えてみれば当然のことで、私たちは生まれてから今まで、顔に何もつけずに眠ってきました。そこにマスクが加わるのですから、体が「いつもと違う」と反応するのは自然なことです。
ガイドラインにも、CPAPの副作用としてマスクによる違和感、鼻やのどの乾燥、皮膚や目の違和感などが挙げられています。気の持ちようではなく、実際に起こりうることとして医学的に認められています。
ただし、ここが重要な点です。これらのほとんどは、調整によって改善できる問題です。
- マスクが合わない場合
マスクには鼻だけを覆うタイプ、鼻の穴に直接あてるピロータイプ、鼻と口を覆うフルフェイスタイプなど複数の形状があり、サイズや素材も多様です。近年は装着感がかなり改善されており、「別のタイプに変えたら楽になった」という方も珍しくありません。ガイドラインでも、患者さんごとに最適なマスクを選ぶことで継続率が改善することがあると示されています。
- 乾燥が気になる場合
加湿器の使用や設定の調整で改善することがあります。鼻づまりがある方では、加湿器や点鼻薬の使用が有効な場合があるとされています。
- 鼻がつまって使えない場合
もともと鼻炎や副鼻腔炎がある方は、そちらの治療で状況が大きく変わることがあります。「CPAPの問題」ではなく「鼻の問題」だったというケースは実際にあります。
- 空気の圧が強く感じる場合
設定圧の見直しや、寝入るまで圧を弱くする機能の活用などを検討します。
- 装着したまま眠りにくい場合
いきなり一晩つけようとせず、日中に短時間つけてみるなど、段階を踏む方法があります。ガイドラインでも、支援的な関わりや教育によって継続率が改善することが示されています。
つまり、「CPAPが合わない」のではなく「今の設定が合っていない」だけというケースが非常に多いのです。だからこそ、遠慮なくご相談いただきたいと思っています。
「一晩中つけられない」という方へ
効果と使用時間の関係については、研究が進んでいます。ガイドラインによれば、日中の眠気の改善には一晩あたり4時間以上の使用が目安とされ、高血圧や心血管イベントの抑制についても同様とされています。
ここで大切なのは、「最初から完璧を目指さなくていい」ということです。最初は2〜3時間だった方が、調整を重ねるうちに朝まで使えるようになるケースを、私たちも実際に経験しています。まず4時間を目標に、少しずつ延ばしていく——そういう進め方で構いません。
なお、CPAPは「治ったらやめる」治療ではありません。中断すれば睡眠時無呼吸は再び戻ってきます(エビデンスレベルA)。眼鏡のように、使っている間、機能を補うものとお考えいただくと分かりやすいかもしれません。
「ここまで来たら相談を」の受診目安
次のような方は、一度ご相談ください。
これから検査・治療を検討したい方:
- いびきや日中の眠気を指摘されたことがある
- 朝の頭痛、口の渇き、夜間頻尿がある
- 血圧の薬を飲んでも下がりにくい
- 健診で血圧・血糖・脂質を複数指摘されている
すでにCPAPを使用中の方:
- マスクの不快感で眠れていない
- 鼻づまりや乾燥がつらい
- 使ってはいるが日中の眠気が改善しない
- 「もうやめようか」と考えている
特に最後の項目に当てはまる方へ。黙って使わなくなってしまうより、正直に打ち明けていただけるほうがずっと助かります。一緒に工夫を探せますから。
当院でできること
当院では、睡眠時無呼吸症候群の検査からCPAP治療の継続的なフォローまでを行っています。
問診で症状や生活の状況を丁寧に伺い、必要に応じてご自宅でできる簡易検査をご案内します。治療開始後は、機器に記録された使用状況のデータを一緒に確認しながら、「何時間使えているか」「空気の漏れはないか」「無呼吸は抑えられているか」を客観的に把握し、マスクや設定の調整を重ねていきます。
鼻づまりや鼻炎が背景にある場合は、そちらの治療も並行して行います。また当院は内科として、高血圧・糖尿病・脂質異常症といった生活習慣病の管理も行っており、睡眠と生活習慣病をまとめて診られることが強みです。より詳しい検査が必要と判断した場合は、専門医療機関と連携してご紹介します。
当院ブログの睡眠時無呼吸症候群とは、「いびきがうるさい」と言われたことがなくても、睡眠アプリで「眠りの質」を測っている方へもあわせてご覧ください。
護国寺・大塚・目白台・雑司ヶ谷・東池袋・江戸川橋エリアにお住まいの皆様、そしてこのエリアで働く皆様。「まず話を聞いてみたい」という段階から、どうぞお気軽にご相談ください。
次の一手——今日からできる3つのこと
① 家族に「いびきや呼吸の止まりに気づいたことはある?」と聞いてみる
② 検査を受けるかどうかも含めて、まず外来で相談してみる
③ すでに使用中でつらさがあれば、次回を待たずにご相談を
よくあるご質問(FAQ)
Q. CPAPの検査は入院が必要ですか?
A. まずはご自宅で普段どおり眠りながら受けられる簡易検査からご案内します。入院は不要です。より詳しい検査が必要と判断した場合には、専門医療機関と連携してご案内します。
Q. CPAPは購入するのですか?費用はどのくらいかかりますか?
A. 機器は医療機関からのお貸し出しになります。保険診療で受けられる治療です。具体的な費用は診察時にご説明しますので、お気軽にお尋ねください。
Q. マスクが合わない場合、変更できますか?
A. できます。鼻を覆うタイプ、鼻の穴にあてるタイプ、鼻と口を覆うタイプなど複数あり、サイズや素材も選べます。合わないまま我慢する必要はありませんので、ご相談ください。
Q. 一晩つけていられません。それでも効果はありますか?
A. 使用時間が長いほど効果は得られやすく、日中の眠気の改善には一晩4時間以上が目安とされています。ただし「短いから無意味」ではありません。まず4時間を目標に、少しずつ延ばしていきましょう。
Q. CPAPは一生使い続けなければいけませんか?
A. 中断すると睡眠時無呼吸は再発するため、原則として使用を続けることになります。ただし減量などで状態が変われば方針を見直すこともあります。自己判断での中止は避け、ご相談ください。
友成第二医院(文京区護国寺)/内科・整形外科・リハビリテーション科
参考
この記事の監修者
鈴木一平(すずき いっぺい)
医療法人社団護友会 友成第二医院 院長
広島大学医学部医学科卒。総合診療医として内科・救急・訪問診療に従事。
日本内科学会内科認定医/日本専門医機構認定内科専門医