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「暑くない」と感じていても——室内の熱中症を防ぐために

── 年齢を重ねた体の変化と、ご家族と一緒にできる夏の備え ──


「自分は大丈夫」——その感覚は、あてにならないのではなく「変わっていく」もの

「今年の夏も、エアコンはあまり使っていない」「昔からこれで平気だった」——そうおっしゃる方は少なくありません。同時に、「実家の親がエアコンを使っていないようで心配」というご家族からのご相談も、この時期よく伺います。

ここで最初にお伝えしたいことがあります。年齢を重ねると、暑さやのどの渇きを感じにくくなる——これは、我慢強さや性格の問題ではなく、誰にでも起こる体の自然な変化です。だからこそ、「感じ方」ではなく「数字」を頼りにする、という工夫が役に立ちます。

この記事は、ご本人にも、離れて暮らすご家族にも読んでいただきたい内容です。体の変化を正しく知り、無理なくできる備えを一緒に考えていきましょう。


結論:夏は「感覚」ではなく「室温と湿度の数字」で判断を

先に、この記事でいちばんお伝えしたいことを。

暑さやのどの渇きを感じにくくなるのは、加齢に伴う体の変化として自然に起こります。ですから、「暑いと感じないから大丈夫」という判断は、年齢を重ねるほど当てはまりにくくなっていきます。

かわりに頼りになるのが、温度計・湿度計の数字です。目安として、室温28℃を超えたら、暑さを感じていなくても冷房や除湿を使う。この一つのルールを決めておくだけで、ずいぶん安全に夏を過ごせます。

「体感を信じられないなんて」と感じる必要はありません。老眼鏡をかけるのと同じで、変化した感覚を道具で補うだけのこと。むしろ、体の変化を知って先手を打つのは、とても賢明な備え方です。


年齢とともに、体はどう変わるのか

なぜ暑さを感じにくくなるのか。その仕組みを知っておくと、対策の意味も納得しやすくなります。

  • 暑さを感じる感覚が穏やかになる:皮膚には温度を感じるセンサーがあり、その情報が脳に届いて「暑い」と判断されます。年齢とともにこの感度が穏やかになるため、室温が高くても暑さとして意識されにくくなります。
  • 熱を逃がす力が変わる:人は汗をかき、皮膚の血流を増やして熱を逃がします。この働きも年齢とともに変化し、体に熱がこもりやすくなります。
  • 体の中の水分量が減る:加齢とともに、体内に蓄えられる水分量は自然に減っていきます。もともとの「水の備え」が少ないぶん、少しの発汗でも脱水になりやすくなります。
  • のどの渇きを感じにくくなる:脱水気味でも「のどが渇いた」という感覚が起こりにくくなります。加えて、トイレが気になって控えめにする、飲み込むときにむせやすくなって水分を避ける

——といった事情が重なることもあります。

どれも、意志の力でどうにかなるものではありません。だからこそ、感覚に頼らない仕組みを作ることが有効なのです。


室内でこそ、対策が効きます

熱中症というと炎天下を思い浮かべますが、実際には住まいの中で起こるケースがもっとも多いことが分かっています。総務省消防庁の集計では、熱中症による救急搬送の発生場所として住居がもっとも多く、全体の約4割を占めています。また、搬送された方のうち65歳以上の方が半数以上となっています。

窓を閉め切った部屋、風の通らない部屋、日中に熱がこもった二階、そして就寝中——こうした場面は、屋外に劣らず注意が必要です。裏を返せば、住まいの環境を整えることが、そのままいちばん効果的な対策になるということでもあります。

当院ブログの「4月なのに27℃」が危険な理由でもお伝えしたように、熱中症は真夏だけのものではありません。体が暑さに慣れていない時期にも起こります。


冷房が苦手な方へ——「冷やす」より「熱をこもらせない」

「冷房をつけると体が冷えて調子が悪い」「関節が痛くなる」「昔からエアコンは苦手」——こうした感覚は、決して思い込みではありません。実際に、冷えが体調に影響することはあります。無理に我慢して冷房をつける必要はありません。

大切なのは「涼しくすること」そのものより、熱を体にこもらせないことです。次のような工夫が役に立ちます。

  • 除湿(ドライ)を活用する:湿度が高いと汗が蒸発せず、熱が逃げません。温度を下げすぎず、湿度を下げるだけでもずいぶん楽になります。目安は湿度40〜60%です。
  • 設定温度は高めに、風を直接当てない:28℃前後に設定し、風向きを上向きにする、扇風機やサーキュレーターで空気を回す。これだけで体感は大きく変わります。
  • 日差しを遮る:すだれ、カーテン、よしずで窓からの熱を防ぐと、室温の上がり方が違います。
  • 温湿度計を見やすい場所に:居間と寝室の両方に置いて、数字で判断できるようにしておく。
  • 就寝中も無理なく:寝苦しい夜は、タイマーではなく弱めの設定で朝までつけておくほうが安全なこともあります。枕元に飲み物を置いておくのもおすすめです。

電気代が気になるというお声もよく伺います。ただ、体調を崩して受診や入院となれば、その負担はずっと大きくなります。冷房代は「健康を守るための必要な費用」と考えていただければと思います。


水分のとり方の工夫

のどの渇きを感じにくくなると、どうしても水分が不足しがちです。無理なく続けられる工夫をご紹介します。

  • 時間を決めて飲む:「起きたら」「食事のたびに」「入浴の前後」「寝る前」など、渇きを待たずにタイミングで飲む習慣に。
  • 手の届く場所に置いておく:わざわざ取りに行かなくていいよう、居間と寝室に飲み物を用意しておく。
  • 食事からもとる:汁物、果物、きゅうりやトマトなど水分の多い食材も立派な水分補給です。
  • むせやすい方は工夫を:少しとろみをつける、一口の量を減らす、ゼリー飲料を活用するなど。むせるのが怖くて水分を控えるのは、避けたいところです。
  • 汗を多くかいた日は塩分も:大量に汗をかいた、下痢や嘔吐があったというときは、水だけでなく経口補水液など塩分・電解質を含むものが役立ちます。

なお、心臓や腎臓の病気で水分・塩分の量に指示が出ている方は、自己判断で増やさず、主治医にご相談ください。


ご家族と一緒に、確認しておきたいこと

離れて暮らすご家族と過ごすお盆などのタイミングは、住まいの環境を一緒に見直すよい機会になります。「心配だから」ではなく、「一緒に夏を無事に越すための準備」として話題にしていただければと思います。

一緒に確認しておきたいこと:

  • 居間と寝室に温湿度計はあるか
  • エアコンは問題なく動くか(リモコンの電池、フィルターの掃除)
  • 手の届く場所に飲み物があるか
  • 寝室に熱がこもっていないか
  • 遮光カーテンやすだれで日差しを防げているか

電話でのやりとりでは:「暑くない?」と聞くと、感覚として本当に暑くないので「大丈夫」と返ってきます。かわりに「今、部屋は何度?」と数字で聞いてみると、お互いに状況を共有しやすくなります。「今日は何を飲んだ?」も同じで、具体的に聞くほうが確認しやすくなります。


こんなときは、早めに医療機関へ

体調に次のような変化があるときは、様子を見ずに対応してください。

すぐに救急要請を検討していただきたい状態:

  • 呼びかけへの反応がはっきりしない、意識がぼんやりしている
  • まっすぐ歩けない、けいれんしている
  • 体が熱いのに汗が出ていない
  • 自分で水分がとれない、飲んでもすぐ吐いてしまう

早めにご相談いただきたい状態:

  • 食欲がなく、ぐったりした状態が続く
  • 嘔吐や下痢が続き、水分がとりにくい
  • 頭痛・めまい・立ちくらみが続く
  • 「いつもと様子が違う」と感じる

夏の体調不良は、熱中症だけでなく感染症など別の原因のこともあります。当院ブログの発熱・だるさ、それ熱中症?それとも夏風邪・コロナ?もあわせてご覧ください。判断に迷うときは、まずお電話でご相談いただければ、状況を伺ったうえでご案内します。


当院でできること

「夏を無事に越せるか不安」「持病があるので暑さの影響が心配」「家族の体調が気がかり」——こうしたご相談を、内科・総合診療の立場からお受けしています。

診察では、体調の確認に加えて、生活環境や水分のとり方、服用中のお薬の影響なども含めて一緒に見直します。持病の内容やお薬によっては、暑さの影響を受けやすいことや、脱水になりやすいことがあります。「この夏をどう過ごすか」を具体的にご相談いただける場でありたいと考えています。

夏に体力を落とすと、その後の生活のしやすさに影響することもあります。当院ブログのフレイル・サルコペニアを防ぐためにでお伝えしているように、暑い時期こそ、食事と体を動かす習慣を保つことが大切です。無理のない範囲での過ごし方も、一緒に考えていきます。

また、通院が難しい方には訪問診療でご自宅に伺うこともできます。生活の場を実際に拝見しながら、暮らしに合った形で健康を支えていきます。当院ブログの往診車を導入しました。訪問診療を拡充しますもご覧ください。

護国寺・大塚・目白台・雑司ヶ谷・東池袋・江戸川橋エリアにお住まいの皆様、そしてこのエリアにご家族がいらっしゃる方。「ちょっと気になる」という段階から、どうぞお気軽にご相談ください。


次の一手——今日からできる3つのこと

① 居間と寝室に温湿度計を置き、「28℃を超えたら冷房・除湿」と決める
② 起床時・食事時・入浴前後・就寝前など、時間を決めて水分をとる
③ 気がかりなことがあれば、早めにご相談を


よくあるご質問(FAQ)

Q. 暑さを感じないのですが、それでも冷房を使ったほうがいいですか?
A. 年齢とともに暑さを感じにくくなるのは自然な変化です。体感ではなく室温・湿度の数字を目安にしていただくと安心です。28℃を超えるようなら、暑さを感じていなくても冷房や除湿の使用をおすすめします。

Q. 冷房が体に合わず、つけると調子が悪くなります。
A. 無理に冷やす必要はありません。除湿機能を使う、設定温度を高めにして風を直接当てない、扇風機で空気を回すなど、「冷やす」より「熱をこもらせない」工夫が有効です。

Q. トイレが近くなるので、水分を控えたくなります。
A. お気持ちはよく分かります。ただ水分を控えると脱水につながりやすくなります。日中を中心にこまめにとり、就寝前は量を調整するなど、時間帯で工夫する方法もあります。頻尿が気になる場合は、その点も含めてご相談ください。

Q. 離れて暮らす家族と、どう話せばいいでしょうか。
A. 「暑くない?」よりも「今、部屋は何度?」と数字で聞くほうが、お互いに状況を共有しやすくなります。心配を伝えるより、「一緒に夏の準備をしよう」という形でお話しいただくと、話題にしやすいかもしれません。

Q. 通院が難しくなってきたのですが、診てもらえますか?
A. 当院では訪問診療にも対応しています。ご自宅に伺い、生活の様子も含めて拝見できます。「まだ早いかもしれない」という段階でのご相談も歓迎します。


友成第二医院(文京区護国寺)/内科・整形外科・リハビリテーション科

参考

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