秋なのに、鼻水やくしゃみが止まらない方へ
── 花粉症・ダニ・寒暖差、見分けるポイント ──
「春は平気なのに、なぜ今?」という方へ
9月に入ってから、外来で「鼻水が止まらない」「くしゃみが続く」というご相談が増えてきました。
多くの方がおっしゃるのが、「花粉症は春だけだと思っていた」「風邪が長引いているのかと思った」という言葉です。中には「毎年この時期だけ調子が悪いが、理由が分からないまま過ごしてきた」という方もいらっしゃいます。
実は、秋の鼻の症状には原因がいくつもあり、しかもそれぞれ見分けがつきにくいという厄介な特徴があります。この記事では、秋に鼻症状が出る主な原因と、その手がかり、そして受診の目安についてお伝えします。
結論:秋の鼻症状には、主に4つの原因があります
先に全体像をお伝えします。この時期の鼻水・くしゃみ・鼻づまりの背景には、主に次の4つが考えられます。
① 秋の花粉症(ブタクサ・ヨモギ・カナムグラなど)
② ダニ・ハウスダストによるアレルギー
③ 寒暖差による鼻炎
④ かぜ・インフルエンザなどの感染症
やっかいなのは、これらが症状だけでは区別しにくく、しかも同時に起こることもあるという点です。「花粉症だと思って市販薬を飲んでいたが、実はダニが原因だった」「風邪だと思っていたらアレルギーだった」——こうしたことは珍しくありません。
見分けの第一歩は、「いつ」「どこで」症状が強くなるかに注目することです。順にご説明します。
秋にも花粉症があります
まず、意外に知られていない事実から。日本で最初に報告された花粉症は、スギではなくブタクサでした。1960年代のことです。その後スギ花粉症が広く知られるようになり、「花粉症=春」というイメージが定着しましたが、秋の花粉症は以前から存在しています。
環境省の「花粉症環境保健マニュアル」によれば、ブタクサ・オオブタクサ・ヨモギなどのキク科、アサ科のカナムグラの花粉は、夏の終わりから秋にかけて飛散します。また、カモガヤやオオアワガエリなどのイネ科の花粉は種類が多く、春から初秋までの長い期間飛んでいます。
これらの草花に共通するのは「身近にある」ということです。スギやヒノキのような樹木と違い、道端、空き地、河川敷、公園の隅——日常的に通る場所に生えています。護国寺・大塚エリアのような都市部でも、決して他人事ではありません。
一方で、草の花粉は遠くまで飛びません。スギ花粉が何十キロも飛ぶのに対し、草本の花粉が飛ぶのはせいぜい数十メートル程度とされています。これは裏を返せば、「原因となる草に近づかなければ避けられる」ということでもあります。散歩やジョギングのコースを少し変えるだけで、症状が軽くなる方もいらっしゃいます。
でも、「花粉症」とは限りません
ここからが大切な部分です。秋の鼻症状は、花粉以外が原因のことも多くあります。
ダニ・ハウスダスト
秋はダニのアレルギーが出やすい季節です。夏に増えたダニが、気温の低下とともに減っていきますが、その死骸やフンが細かい粒子となって室内に残り、掃除や人の動きで舞い上がります。これがアレルギーを引き起こします。
見分けの手がかりは「どこで悪化するか」です。外に出たときより、家の中、特に掃除や布団の上げ下ろしのときに症状が強くなるなら、ダニやハウスダストの関与を疑います。環境省のマニュアルでも、ダニ・ペット・カビなどは通年性のアレルゲンとして注意が必要とされています。
寒暖差による鼻炎
9月から10月にかけては、朝晩と日中の気温差が大きくなります。この温度差そのものが、鼻の粘膜の血管や自律神経に影響し、鼻水やくしゃみを引き起こすことがあります。
手がかりは「目のかゆみがない」ことです。アレルギーであれば目にも症状が出ることが多いのですが、寒暖差が原因の場合は鼻の症状だけのことが多く、暖かい場所に移動すると落ち着くという特徴があります。当院ブログの梅雨入り前の「なんとなく不調」、それは気象病かもしれませんでお伝えした、気温変化と自律神経の関係とも通じる話です。
かぜ・インフルエンザなどの感染症
そして今シーズンは、この可能性も見逃せません。東京都では例年より1か月以上早くインフルエンザの流行が始まっています。
手がかりは「熱」「のどの痛み」「経過」です。アレルギーでは発熱はまず起こりません。また、アレルギーの鼻水は透明でサラサラしていることが多いのに対し、感染症では数日でネバネバした色のついた鼻水に変わることがあります。さらに、アレルギーは原因があるかぎり続きますが、かぜは1週間前後で改善に向かうのが一般的です。
詳しくは当院ブログのインフルエンザワクチン、いつ打つのがいい?や発熱・だるさ、それ熱中症?それとも夏風邪・コロナ?もご覧ください。
見分けるための3つの問い
ご自身で整理するとき、次の3点を振り返ってみてください。
「いつ」症状が出ますか?
毎年同じ時期に繰り返すなら、季節性のアレルギーの可能性が高まります。今年だけ、数日前から急に始まったなら、感染症を考えます。
「どこで」悪化しますか?
屋外や草の多い場所で悪化するなら花粉、家の中や掃除のときなら ダニ・ハウスダスト、朝晩の冷え込みで悪化するなら寒暖差——という手がかりになります。
目のかゆみや熱はありますか?
目のかゆみがあればアレルギーの可能性が高く、発熱やのどの痛みがあれば感染症を疑います。
ただし、これらはあくまで手がかりであり、確実な区別ではありません。複数が重なっていることもあります。「自分はこれだ」と決めつけず、つらさが続くなら一度確認しておくのが確実です。
今日からできる対策
原因によって対策は変わりますが、共通して有効なことをお伝えします。
花粉が疑われる場合:草の多い場所を避ける、外出後は顔を洗い、うがいをする、衣類の花粉を払ってから室内に入る。草本花粉は飛散距離が短いため、「近づかない」ことが最も効果的です。
ダニ・ハウスダストが疑われる場合:寝具をこまめに洗濯・乾燥する、掃除機をゆっくりかける、布団を干した後は表面を掃除機で吸う、換気をする。
寒暖差が疑われる場合:朝晩に羽織るものを一枚用意する、マスクで鼻の周りの温度を保つ、室内の温度差を小さくする。
市販薬について:軽い症状であれば市販の抗アレルギー薬も選択肢です。ただし、「効かない」「眠気が強くて仕事に支障が出る」という場合は、薬が合っていないか、原因が違う可能性があります。漫然と飲み続ける前に、一度ご相談ください。
「ここまで来たら相談を」の受診目安
次のような場合は、一度ご相談ください。
- 2週間以上、鼻の症状が続いている
- 市販薬を飲んでも改善しない、または眠気がつらい
- 毎年この時期だけ不調になるが、原因が分からない
- 鼻づまりで眠れない、口呼吸になっている
- 熱やのどの痛みを伴う
- 咳が長引いている、息苦しさがある
- 目のかゆみが強く、日常生活に支障がある
特に「鼻づまりで眠れない」という状態は軽く見ないでください。睡眠の質が下がると、日中の集中力や体調に影響します。当院ブログの睡眠アプリで「眠りの質」を測っている方へでもお伝えしたように、鼻づまりは睡眠の質を下げる要因のひとつです。
また、アレルギー性鼻炎はまれに喘息を併発することがあります。咳が長引く、息苦しさがあるという場合は、早めにご相談ください。
当院でできること
「花粉症なのか、風邪なのか、それとも別の何かなのか分からない」——この状態こそ、私たちがお役に立てる場面です。
当院では、症状の経過・悪化する場面・生活環境などを丁寧に伺い、必要に応じて血液検査でアレルギーの原因を調べることもできます。環境省のマニュアルにも、地域によっては内科でもアレルギーの検査や治療を受けられると記されているとおり、当院でもご相談いただけます。
そのうえで、症状のタイプに合わせて、内服薬・点鼻薬・点眼薬などを組み合わせてご提案します。「眠くなる薬は困る」「仕事に支障が出ないようにしたい」といったご希望も、遠慮なくお聞かせください。より専門的な検査や治療が必要と判断した場合は、専門医療機関と連携してご紹介します。
「何科に行けばいいか分からない」という段階でも構いません。内科の症状でも、それ以外でも、まずご相談いただければ交通整理からお手伝いします。
護国寺・大塚・目白台・雑司ヶ谷・東池袋・江戸川橋エリアにお住まいの皆様、そしてこのエリアで働く皆様。「毎年この時期だけつらい」を、今年こそ整理してみませんか。
次の一手——今日からできる3つのこと
① 症状が「いつ・どこで」強くなるかを1週間メモしてみる
② 寝具の洗濯・掃除など、できる対策をひとつ試す
③ 2週間以上続く、または市販薬が効かない場合はご相談を
よくあるご質問(FAQ)
Q. 春は何ともないのに、秋だけ鼻水が出ます。花粉症でしょうか?
A. 秋に飛ぶブタクサ・ヨモギ・カナムグラなどの花粉が原因の可能性があります。ただし、ダニ・ハウスダストや寒暖差が原因のこともあります。血液検査で原因を調べることができますので、ご相談ください。
Q. 花粉症と風邪は、どう見分ければよいですか?
A. 発熱やのどの痛みがあれば感染症を疑います。アレルギーでは目のかゆみを伴うことが多く、鼻水は透明でサラサラしているのが一般的です。また、かぜは1週間前後で改善に向かいますが、アレルギーは原因があるかぎり続きます。
Q. 家の中にいるときのほうが症状が強いのですが、なぜですか?
A. ダニやハウスダストが原因の可能性があります。夏に増えたダニの死骸やフンが、秋に室内で舞い上がることでアレルギー症状を引き起こします。掃除や寝具の手入れで改善することがあります。
Q. 市販薬を飲んでいますが、あまり効きません。
A. 薬が症状のタイプに合っていない可能性や、想定と違う原因が隠れている可能性があります。医療機関では、眠気の少ない薬や点鼻薬など、症状に合わせた選択ができます。一度ご相談ください。
Q. アレルギーの検査は内科でも受けられますか?
A. はい。当院でも血液検査でアレルギーの原因を調べることができます。より専門的な検査や治療が必要な場合は、専門医療機関と連携してご紹介します。
友成第二医院(文京区護国寺)/内科・整形外科・リハビリテーション科
参考
この記事の監修者
鈴木一平(すずき いっぺい)
医療法人社団護友会 友成第二医院 院長
広島大学医学部医学科卒。総合診療医として内科・救急・訪問診療に従事。
日本内科学会内科認定医/日本専門医機構認定内科専門医