インフルエンザにかかった後も、ワクチンは必要ですか?
── 今シーズン、外来でよくいただく3つのご質問 ──
流行が早い今年ならではの、切実な疑問
今シーズンは例年より1か月以上早くインフルエンザの流行が始まり、ワクチンを接種する前にA型にかかってしまったという方が少なくありません。
そうした方から、外来で繰り返しいただくご質問が3つあります。
「もうかかったから、ワクチンは打たなくていいですよね?」
「こんなに早く打って、流行のピークまで効果は切れませんか?」
「1回目を早く打ってしまったので、大人でも2回打ったほうがいいですか?」
どれも、とても理にかなった疑問だと思います。この記事では、この3つに公的な情報をもとにお答えします。
結論:3つのご質問への答え
先にまとめてお伝えします。
① かかった後も、ワクチンは必要です。型が違えば、これまでの感染で得た免疫は働きません。
② 流行のピークはおおむねカバーできます。ただし2〜3月に大切な予定がある方は、接種時期のご相談を。
③ 大人は、原則として1回で十分です。「早く打ったから」という理由での追加接種は、公的に推奨されているものではありません。
以下、それぞれ詳しくご説明します。
①「もうかかったから、打たなくていい?」
答えは「いいえ、接種をおすすめします」です。
理由は、インフルエンザウイルスが一種類ではないからです。
流行するインフルエンザにはA型とB型があり、さらにA型には2つの亜型(H1N1pdm09とH3N2)が存在します。つまり、毎シーズン流行しうるウイルスは実質3種類あるということです。
そして重要なのは、これらの間で免疫がほとんど共有されないという点です。A型のH3N2にかかって免疫ができても、それはH1N1pdm09やB型には働きません。「かかったから、もう安心」とはならないのです。
現在のインフルエンザワクチンは、A型2種類とB型に対応するよう作られています。すでに一度かかった方でも、接種することでまだ経験していない型に備えることができます。
実際、シーズン前半にA型が流行し、後半にB型が流行する年は珍しくありません。今シーズンは流行の立ち上がりが早いぶん、シーズン全体が長くなる可能性もあります。一度かかった方こそ、残りのシーズンへの備えをご検討ください。
接種のタイミングについて:体調が十分に回復してからの接種となります。解熱後、普段どおりの生活に戻れてからが目安です。迷われる場合は、診察時にご相談ください。
②「早く打って、効果は切れない?」
答えは「流行のピークはおおむねカバーできますが、大切な予定がある方は時期の相談を」です。
まず、効果の現れ方と持続について整理します。一般に、インフルエンザワクチンは接種からおよそ2週間で抗体が上がり始め、4週ほどでピークに達し、その後3〜5か月かけて徐々に低下していくとされています。
ここで正直にお伝えしておきたいことがあります。「○か月効果が持続する」という明確な数字は、厚生労働省の公式文書には示されていません。よく見かける「約5か月」という数字は、臨床上の目安として広く使われているものです。しかも効果の下がり方には個人差があり、ご高齢の方や免疫の働きが低下している方では、より早く低下する可能性も指摘されています。
厚生労働省が公式に示しているのは、「12月中旬までに接種を終えることが望ましい」という目安です。これは、日本では例年12月〜3月頃に流行し、1月末〜3月上旬に流行のピークを迎えるためです。
では、9月・10月の接種はどうか。流行の立ち上がりから年内いっぱい、そして流行ピークの入り口までは、十分に守備範囲に入ります。しかも今シーズンは8月下旬からすでに流行が始まっているため、「12月に打てばいい」と考えていると、それまでの数か月が無防備になります。早めの接種には、今年に限っては明確な意味があります。
一方で、2月〜3月に受験や大切な予定がある方については、少し事情が異なります。9月の接種では、その時期に抗体が下がっている可能性があるためです。こうした方は、予定から逆算して接種時期を決めることをおすすめします。目安としては、大切な予定の1〜2か月前に免疫がしっかり働いている状態を目指す形です。
「もう9月に打ってしまったが、2月に受験がある」という場合の対応は、年齢や体調、これまでの接種歴によって考え方が変わります。個別にご相談ください。
③「大人も2回打ったほうがいい?」
答えは「原則として1回で十分です」です。
これは明確な根拠があります。厚生労働省のQ&Aには、次のように記されています。
ワクチンの添付文書には「13歳以上のものは1回または2回注射」と記載されているものの、健康な成人の方や基礎疾患のある方を対象に行われた研究から、0.5mLの1回接種で、2回接種と同等の抗体価の上昇が得られるとの報告がある——と。実際、高齢者などを対象とした定期の予防接種も1回接種とされています。
国際的にも同様です。世界保健機関(WHO)は9歳以上の小児および健康成人に対して「1回注射」が適切との見解を示しており、米国の予防接種諮問委員会(ACIP)も9歳以上は「1回注射」としています。
つまり、「早く打ったから、もう1回打っておこう」という理由での追加接種は、公的に推奨されているものではありません。費用も時間もかかりますので、私たちとしては、必要のない接種をおすすめすることはいたしません。
2回接種が必要・検討される場合:
- 13歳未満のお子さんは2回接種です(6か月以上3歳未満は1回0.25mL、3歳以上13歳未満は1回0.5mL)。1回接種より2回接種のほうが高い抗体価が得られるためです。
- 13歳以上でも、基礎疾患があり著しく免疫が抑制されている状態など、医学的な理由から医師が必要と判断した場合は2回接種となることがあります。
なお、添付文書上は13歳以上でも「1〜4週間の間隔をおいて2回」という接種方法が認められています。受験を控えた方などでこの方法を検討される場合は、接種時期の設計も含めて診察時にご相談ください。
「ここまで来たら相談を」の受診目安
次のような方は、一度ご相談ください。
- 今シーズンすでにインフルエンザにかかったが、ワクチンを打つべきか迷っている
- いつ接種するのがよいか判断がつかない
- 2月〜3月に受験や大切な予定がある
- 持病があり、接種の可否や回数を確認したい
- 家族に受験生や乳幼児、高齢の方がいて、接種の優先順位を考えたい
- 発熱したが、インフルエンザかどうか分からない
発熱や強い倦怠感がある場合は、院内での感染拡大を防ぐため、来院前にお電話でご連絡ください。症状を伺い、受診方法や時間帯をご案内します。発熱の見分け方については、当院ブログの発熱・だるさ、それ熱中症?それとも夏風邪・コロナ?もご参考にどうぞ。
当院でできること
当院では、インフルエンザワクチンの接種に加えて、「自分は打つべきか」「いつがよいか」「何回必要か」といったご相談をお受けしています。
接種の必要性やタイミングは、一人ひとり異なります。すでに罹患された方、持病をお持ちの方、受験を控えたご家族がいる方——こうした背景を踏まえて、必要な方に、必要なだけご案内することを大切にしています。逆に、医学的に必要のない接種をおすすめすることはありません。
当院は内科として高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病を継続的に診ており、普段の体調を把握したうえでご案内できることが強みです。帯状疱疹ワクチンや肺炎球菌ワクチンとの組み合わせについても、あわせてご相談いただけます。当院ブログのインフルエンザワクチン、いつ打つのがいい?や大人にも必要なワクチンがありますもご覧ください。
護国寺・大塚・目白台・雑司ヶ谷・東池袋・江戸川橋エリアにお住まいの皆様、そしてこのエリアで働く皆様。予約不要で、診療時間内にそのままお越しいただけます。疑問をお持ちのまま迷っている方こそ、お気軽にご相談ください。
次の一手——今日からできる3つのこと
① すでに罹患された方も、体調が戻ったら接種をご検討ください
② 「まだ早い」と先延ばしにせず、都合のつく日に済ませておく
③ 2月〜3月に大切な予定がある方は、接種時期を逆算してご相談を
よくあるご質問(FAQ)
Q. 先月インフルエンザA型にかかりました。それでもワクチンは必要ですか?
A. はい、おすすめします。A型にはH1N1pdm09とH3N2の2つの亜型があり、さらにB型もあります。これらの間で免疫はほとんど共有されないため、かかっていない型に備える意味があります。
Q. かかった後、どのくらい経てば接種できますか?
A. 体調が十分に回復してからの接種となります。解熱し、普段どおりの生活に戻れていることが目安です。時期に迷われる場合は診察時にご相談ください。
Q. 9月に打ちましたが、3月まで効果は続きますか?
A. 一般に接種後2週間ほどで抗体が上がり始め、4週でピーク、その後3〜5か月かけて徐々に低下するとされています。流行ピークの入り口まではおおむねカバーできますが、下がり方には個人差があります。2月〜3月に受験など大切な予定がある方は、接種時期について個別にご相談ください。
Q. 2月に受験があります。いつ打つのがよいですか?
A. 大切な予定の1〜2か月前に免疫がしっかり働いている状態が理想です。2月の受験であれば、11月下旬〜12月上旬の接種が目安になります。すでに接種済みの方の対応は個別に異なりますので、ご相談ください。
Q. 大人ですが、念のため2回打ったほうが安心ではないですか?
A. 厚生労働省は、1回接種で2回接種と同等の抗体価上昇が得られるとの報告を示しており、定期接種も1回とされています。WHOや米国ACIPも9歳以上は1回を適切としています。医学的な理由がある場合を除き、1回で十分です。
Q. 子どもは2回接種が必要と聞きました。何歳からが1回ですか?
A. 13歳未満のお子さんは2回接種、13歳以上は原則1回接種です。なお当院では小学1年生以上の方を接種対象としています。
友成第二医院(文京区護国寺)/内科・整形外科・リハビリテーション科
参考
この記事の監修者
鈴木一平(すずき いっぺい)
医療法人社団護友会 友成第二医院 院長
広島大学医学部医学科卒。総合診療医として内科・救急・訪問診療に従事。
日本内科学会内科認定医/日本専門医機構認定内科専門医