LDLコレステロールが高いと言われたら——「すぐ薬?」の前に確認したいこと
── 健診の数値の意味と、自分のリスクの考え方 ──
「悪玉が高い」と書いてあった。でも、どこも痛くない
健診の結果を開くと、LDLコレステロールの欄に「152」という数字と「H」の印。コメント欄には「要再検査」の文字。
「悪玉って、やっぱり悪いもの?」「受診したら、すぐに薬を出されるのでは」——そんな不安から、結果の紙をそのまましまってしまう方も少なくありません。
この記事では、健診でLDLコレステロールが高いと言われた方に向けて、数値の意味、薬が必要かどうかを考えるときのポイント、そして今日からできることをお伝えします。
先にお答えします:数値だけで「薬が必要」とは決まりません
健診で使われる「LDLコレステロール140mg/dL以上」という基準は、脂質異常症の可能性がある方を見つけるための目安です。この基準に当てはまったからといって、すぐに治療が必要になるわけではありません。
薬が必要かどうかは、LDLの数値に加えて、年齢、血圧、血糖、喫煙、家族歴など、動脈硬化のリスク全体を見て判断します。心筋梗塞や脳梗塞を起こしたことがない方であれば、まずは食事や運動など、生活習慣の見直しから始めるのが基本です。
ただし例外もあります。LDLコレステロールが180mg/dL以上の場合は、生活習慣の見直しに加えて薬による治療を考えることが勧められています。また、生まれつきLDLが高くなりやすい体質(家族性高コレステロール血症)の可能性も確認が必要です。
「すぐ薬」でも「放っておいてよい」でもなく、まず自分のリスクを知ること。 これが、LDLが高いと言われたときの最初の一歩です。
確認したいポイントを、順にご説明します。
まず、健診の数値の区切りを確認しましょう
LDLコレステロールは、コレステロールを全身に運ぶ役割を持っています。体に必要なものですが、多すぎると血管の壁にたまり、動脈硬化を進めます。これが「悪玉」と呼ばれる理由です。
一方、余分なコレステロールを回収するHDLコレステロールは「善玉」と呼ばれます。中性脂肪(トリグリセライド)も、増えすぎると動脈硬化に関わります。基本的な仕組みは、当院ブログの脂質異常症(LDL・中性脂肪)についてで詳しく解説しています。
日本動脈硬化学会の診断基準では、次のように区切られています。
| 項目 | 区切り |
|---|---|
| LDLコレステロール 140mg/dL以上 | 高LDLコレステロール血症 |
| LDLコレステロール 120〜139mg/dL | 境界域高LDLコレステロール血症 |
| HDLコレステロール 40mg/dL未満 | 低HDLコレステロール血症 |
| 中性脂肪 150mg/dL以上(空腹時)、175mg/dL以上(随時) | 高トリグリセライド血症 |
脂質異常症には、自覚症状がありません。痛みもかゆみもないまま血管に負担がかかっていくため、健診の数値が貴重な手がかりになります。
薬の前に確認したい3つのこと
① ほかにどんなリスクがあるか
LDLの数値は、単独ではなく、ほかのリスクと組み合わせて評価します。年齢、性別、喫煙、血圧、血糖、HDLコレステロールなどをもとに、将来の心筋梗塞や脳梗塞のリスクを「低リスク」「中リスク」「高リスク」に分け、それぞれで目標とするLDLの値が変わります。
心筋梗塞や脳梗塞を起こしたことがない方の場合、目標はおおむね次のとおりです。
- 低リスク:160mg/dL未満
- 中リスク:140mg/dL未満
- 高リスク:120mg/dL未満
つまり、同じLDL 150mg/dLでも、低リスクの方にとっては目標の範囲内、高リスクの方にとっては下げる必要がある数値、ということになります。
② 持病や、過去の病気があるか
糖尿病がある方は高リスクとして扱われ、目標は120mg/dL未満、合併症がある場合や喫煙している場合は100mg/dL未満になります。
心筋梗塞などの冠動脈疾患や、動脈硬化による脳梗塞を起こしたことがある方は、再発を防ぐために100mg/dL未満(条件によっては70mg/dL未満)が目標です。この場合は、生活習慣の見直しとあわせて薬を検討します。
③ 生活習慣に見直す余地があるか
LDLは食事の影響を受けます。まだ食事の見直しに取り組んでいない方であれば、一定期間取り組んでから改めて数値を確認する、という進め方が十分に考えられます。
この3つをあわせて見ることで、「今は生活の見直しで様子を見る」のか「早めに薬も考える」のかが見えてきます。ご自身だけで判断するのは難しい部分なので、健診結果を持って医師と一緒に整理するのが確実です。
今日からできる見直し
LDLを上げる食事の要因として大きいのは、肉の脂身やバター、ラードなどに多い飽和脂肪酸です。冷蔵庫で固まる油脂は飽和脂肪酸が多く、サラダ油や魚の油のような液体の油は不飽和脂肪酸が多い傾向があります。まずは脂身の多い肉や加工肉を食べる回数を減らし、その一部を魚や大豆製品に置き換えるところから始めてみてください。
卵の黄身や魚卵に含まれるコレステロールもLDLを上げます。ただ、その影響は個人差が大きく、飽和脂肪酸に比べると小さいことが知られています。それでも、LDLが高い方は、食事からのコレステロールを1日200mg未満に抑えることが勧められています。「卵は一切だめ」ではなく、とりすぎないことを意識しましょう。野菜や海藻、きのこなどを組み合わせ、食事全体のバランスを整えることも大切です。
運動は、主に中性脂肪を下げ、HDLを増やす方向に働きます。LDLそのものを下げるには食事の見直しが中心になるため、運動と食事を組み合わせるのが現実的です。お酒の飲みすぎは中性脂肪を上げるので、量にも気をつけたいところです。喫煙されている方は、禁煙も動脈硬化を防ぐための大きな一歩になります。
受診を考える目安
次のような場合は、早めに医療機関へご相談ください
- LDLコレステロールが180mg/dL以上だった
- ご家族に、LDLが非常に高い方や、若くして(男性55歳以下、女性65歳以下)心筋梗塞・狭心症になった方がいる
- 糖尿病などの持病がある、または過去に心筋梗塞・脳梗塞を起こしたことがある
次のような場合も、一度相談しておくと安心です
- LDLが140〜179mg/dLで、血圧・血糖・尿酸など、ほかの項目も指摘されている
- たばこを吸っている
- 毎年少しずつLDLが上がっている、または生活を見直しても下がらない
次のような症状があるときは、ためらわず119番へ
胸の痛みや締めつけ感が続く、片側の手足が動かしにくい・しびれる、ろれつが回らない——こうした症状は、心筋梗塞や脳卒中のサインのことがあります。
「数値の意味を確認したい」というのも、立派な受診理由です。毎年同じ指摘を受けている方は、健診で毎年同じ指摘、放っていませんか?もあわせてお読みください。
当院でできること
当院は、「LDLが高いと言われたけれど、薬が必要なのか分からない」という方の、最初の相談窓口でありたいと考えています。
健診の結果票(過去の分があればそれも)をお持ちいただければ、LDLの数値だけでなく、血圧・血糖・喫煙・家族歴なども含めて、動脈硬化のリスクを一緒に整理します。そのうえで、「今は生活の見直しから始める」のか「早めに薬も考える」のかを、ご本人のお考えも伺いながら決めていきます。
必要に応じて採血で再検査を行います。採血は外部の検査機関で測定するため、結果は当日ではなく後日のご説明になります。
脂質異常症は、高血圧や糖尿病と重なりやすい病気です。血圧が気になる方は血圧が130台になってきた。これって治療が必要?、血糖を指摘された方は「HbA1cが少し高い」と言われたらもご覧ください。
護国寺・大塚・目白台エリアにお住まいの皆様、そしてこのエリアで働く皆様。「悪玉が高い」と言われて不安な方も、まずは結果票を持って、数値の意味を一緒に確認しましょう。分かるまで、丁寧にご説明します。
次の一手——今日からできること
- 健診結果で、LDLだけでなくHDL・中性脂肪・血圧・血糖の数字も確認する
- ご家族に、コレステロールや心臓の病気のことを聞いてみる
- 脂身の多い肉や加工肉を、週に何回か魚や大豆製品に置き換えてみる
よくあるご質問
Q. LDLが高いと、すぐに薬を飲まないといけませんか?
A. いいえ。数値だけでは決まりません。ほかのリスクを含めて判断し、まずは生活習慣の見直しから始めることが多くあります。ただし、180mg/dL以上の場合や持病・既往がある場合は、早めに薬を検討することがあります。
Q. 卵は食べないほうがいいですか?
A. 食事中のコレステロールがLDLに与える影響には個人差があります。完全にやめる必要はありませんが、LDLが高い方は1日200mg未満を目安に、とりすぎないよう意識しましょう。
Q. 運動だけでLDLは下がりますか?
A. 運動は主に中性脂肪を下げ、HDLを増やす方向に働きます。LDLを下げるには、食事の見直しとの組み合わせが中心になります。
Q. コレステロールの薬は、一度飲み始めたらやめられませんか?
A. やめられるかどうかは、リスクの程度や数値の経過によって異なります。自己判断で中断せず、医師と相談しながら決めていきます。
Q. LDLだけが高く、ほかは正常でした。様子を見てもいいですか?
A. ほかのリスクが少なければ、すぐに薬が必要になることは多くありません。ただ、LDLが高い状態が長く続くほど動脈硬化は進むため、生活の見直しに取り組みつつ、一度ご自身のリスクの程度を確認しておくと安心です。
友成第二医院(文京区護国寺)/内科・整形外科・リハビリテーション科
参考文献
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「脂質異常症」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「脂質異常症の食事」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「脂質異常症を改善するための運動」
- 日本動脈硬化学会「家族性高コレステロール血症(FH)とは?」
- 日本動脈硬化学会「脂質異常症診療のQ&A」
この記事の監修者
鈴木一平(すずき いっぺい)
医療法人社団護友会 友成第二医院 院長
広島大学医学部医学科卒。総合診療医として内科・救急・訪問診療に従事。
日本内科学会内科認定医/日本専門医機構認定内科専門医